カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

Don't feel, Think.

玄関に我が家の床に合わせた木目タイルを張ることは(自分の中の)流行であったらしい。
家の物を選ぶときに気をつけなくてはいけないのは、自分がこれだと思い描いた型は本当に自分にとって普遍的なものか、それとも単に流行に過ぎないものかを見極めること。これぞと思って採用したものが実は一時の流行に過ぎないものであったとしたら、早晩飽きてしまってその後長く不満足な時を共に過ごすことになる。なので簡単に代えのきかないものこそ牛のように何回も反芻を重ねてそれが本当に自分にとっての定番と成りうるものであるかを見極める必要がある。

自分の例でいえば、第一印象でビビッと来たものは大抵は外れであるというしょうもない法則が大体においてあてはまる。逆に最後に正解として残ったものが初見では大して印象に残らない、これもまたよくある。
一例では、数年前に我が家の一番広い面の壁に左官で塗りなおした鈍色(グレー)の漆喰。実は墨色を塗ることに決めていてその他の色は一顧だにしていなかったのだが、念には念を入れて黒い模造紙を取り寄せ、実際に壁一面に貼って三週間ばかり生活してみたところこれはどうも違うなと。そうしてよくよく考えた結果、当初は墨色の脇で全く印象に残らなかった「鈍色」こそが自分の正解であったと気づいた。こんなことは枚挙に暇がない。

なので、自分自身は己が「直観」というものにあまり信を置いていない。一発で正解を当てる才に恵まれた訳でもない凡夫はそんなあやふやなものを当てにすべきではない。上から見て下から見て表から見て裏から見て、熟考に熟考を重ねたうえで発酵するまでしばらく寝かせておいて、最後に浮き上がった型こそが自分にとって正解なのだ。

二回目の玄関タイル選び

家づくりのイメージを固める方法は人それぞれだろうが、自分の場合はとにかく情報を仕入れて目を肥やすのに努める。そうするうちにやがてイメージがだんだん鮮明にはっきりとしてくる。時間はかかるが、自分の場合は当初描いていたイメージが心の底から引き上げてみると実は全然違う形だったということも珍しくないのでこのプロセスは欠かせない。
回り道せずに一発でイメージを固められればそれに越したことはないが、その才に恵まれていないことは分かっているので、ひたすらうだうだとああでもないこうでもないと時間を積み重ねる。

居候が壊した玄関に再度貼り重ねるタイルについてもそう。タイルの品揃えでは国内で右に出るもののないサンワカンパニー(またの名を施主支給の友)のウェブサイトで膨大なサンプルを延々と眺め、最後に実物を見てイメージを確定させる。
建築資材は出来るだけ実物を見た方がいい。表面の艶や質感、全体の「感じ」などはやはり実物を見るのが一番よく分かる。

今回の玄関のテーマは

ウェブサイトでイメージを練った結果、今回も木目調タイル*1、しかも床のウォルナットと同じような濃褐色タイルをセレクトでほぼ決まり。
床の色と近い色の木目調タイルを貼り込めば、床から一続きのように一体感が生まれて広く見えるのではないかというのがその理由。

最後に念のため実物を確認。前回の玄関タイル張り時に訪れて以来5年半ぶりに、青山から外苑前に移転したサンワカンパニーショールームを訪れる。
いかに広大なショールームとはいえ、扱っているタイル全てのサンプルを展示するのは不可能で展示はごく一部。ただ木目調タイルは売れ線のようで、自分が目をつけていたタイルはおよそ手に取ることが出来た。

 

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ワックスを塗られながら使い込まれた風の艶「パルケ」

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使い込まれてペンキが剥がれた床板をリアルに再現、ワイルドな風合いの「メルヴィン」

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「ヤングギャラリー」は鋸目までリアルに再現。文字通りギャラリーに合いそう

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「ラ・フォレスタ」ダッコとマロン。これは艶が少しタイルっぽい

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焼杉板の表面を再現した「ヤキシダ」は白とグレーと黒の三色

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本命「ヤングギャラリー」マロンは表面の艶感まで超リアル
 
結論

手にっては矯めつ眇めつ、閉店時間まで一時間以上かけて候補のタイルをつぶさに見た結果、木目調タイルはどうも心の底のイメージとは少し違うようだということが判明。タイル自体は非常によくできてはいるのだが、実物を手に取ってみたら何かは分からないが何かが違うと。こういう時は心の声に従うのが正しい。

 

本日の結果

ショールームで現物を確かめた結果、玄関タイル選びは振り出しに戻った。こんなことがあるからやっぱりセンスない人間は物を選ぶのに手間暇を惜しんじゃいけないのよ。
あー危ない危ない

*1:木目調タイル表面はプリントではあるが、欧州の名だたるメーカーで作られているものはその辺の安物と違って木目パターンが何十もあって出来るだけかぶらない様に配慮されている。また表面の艶も絶妙に抑えられており、クォリティは非常に高い。

何かが損なわれてしまったのだ。何かっていうと、玄関が。

久方ぶりに催された施主の集いから遡ること二日前、我が家の居候は調子に乗ってとんでもないことをやらかしていた。

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ビシーッと

居候が玄関に出るのを防止する柵。その柵に張りめぐらされたチェーンから宙に駆け出そうかというように目いっぱい身を乗り出し、挙句に柵を繋ぎとめていた重さ5kgはあるアンティークのガーゴイルを玄関に引きずり落としたのだ。
ジャン・リュック・ゴダールの古い白黒映画の銃声のような音が響き、思わず階下に駆け降りた僕が目にしたのは、無残に割れて転がっている大理石のガーゴイルと、欠けて穴が開き、あまつさえ大きなヒビまで入っている、六年前に自ら貼った大判タイル。

やれやれ。僕は三味線屋に電話した。無論、こんなカタストロフを招いたろくでもない居候に責任を取ってもらうためだ。しかしその時になって初めて僕は、今どきの三味線は犬の皮を使っており猫はお呼びでないということを知った。
「犬?」僕は聞き返した。
「そう、犬。だから猫は要らないの」
受話器の向こうの声は感情をこめずに小さく言った。まるで壁に描かれた大きな文字を読み上げているような声だった。本当に壁にそう書いてあるのかもしれないなと僕は思った。
「お呼びじゃないってさ」そう言って振り返ると、居候は真っ白な画用紙を眺める時のような目つきで僕の顔を眺め、やがて身体を器用に折り曲げて自分の尻をひとしきり舐めるとどこかに行ってしまった。

やれやれ。居候の処分はひとまずペンディングにすることを決めると、改めて玄関に降りてタイルの損傷を確かめる。傷はひどいもので、ここまで深く破壊されてしまってはもうどうしようもない。たぶんこのタイルは割れるべくして割れたのだろうし、もしこのとき割れていなかったとしても、別のどこかで割れていただろう。特に根拠があるわけではないのだが、僕はそんな気がした。

ここまで考えたところで、居候が去った方角から漂ってきた異臭が強引に僕を現実に引き戻す。そのにおいはどこか懐かしいもののように感じられたが、どちらかといえば悪臭の領域に属するものだった。
またウンコかよ。今日二度目だろ。やれやれ。僕はスコップを取った。

かくして、完成9年目にして早くも二度目の玄関リフォーム工事が決定。やれやれ。僕はかぶりを振った。ノーベル賞今年も残念でした)

 

久々の施主の集い

残暑厳しい平成最後の9月初頭、久々に家がらみの来客。言わずと知れた杉茂ことS氏、風樂房のらっきょさんご夫婦、kinocoのHさんにマニハウスのMさんが見えられ、眼下に広がる縁日の屋台などを見ながら大いに飲み(頂いたビールを)かつ食べ(頂いた肴を)などしつつ。

調子よくタダで飲み食いする家主に代わり愛想を振りまくのは居候の仕事。

 

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舐めていい?ねえ舐めていい?と言われてさすがに引いている居候の図

この時点でしこたま酔いが回っていたMさんはほどなくして行方不明となり、やがて階下で死体として発見されるのだが、初めて目にして思わず悲鳴を上げるHさんとあーはいはいという感じで事務的に処理するS氏の対比が面白い。

それはともかく酒に弱い家主が毎回ビールだけで出来上がってしまってその先のお酒に進めない課題は今回も解決できず。次回は初めから複数種類を供するようにしたい。

 

Paint it Black 2018その2

後付けライトアップのスポットライト、電源ケーブルは地下ではなく玄関ポーチのコンセントから地上部を這わせており、したがってそれなりに見苦しい。これを隠すだけのお手軽DIY

 

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こんな感じ

いかにも見苦しいこのケーブルの取り回しを綺麗に片付けるには屋内と同様にモールを用いるが、一般的なプラでは屋外使用では紫外線でバキバキに割れてしまう恐れがある。したがってDIYの味方モノタロウから金属カバーのモールを調達。

 


金属モールは白色しか選択肢がないので、取り寄せた後はおなじみ金属塗料のシュペンパンツァー(チャコールグレー)を塗布。プライマーと塗料で合わせて一日かけ、乾燥を待って二日目に施工。

施工とはいえ実に簡単、長さを合わせグラインダーの刃を当てればカットにかかる時間は僅か三秒。あとは裏面に強力両面テープを貼って(初めからついている両面テープは粘着力が弱いので使えない)モルタルの隅に貼り付けるだけ。

 

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コーナー部分アップ

やはり我が家の外壁と合う色はこれ。白はないな白は

 

小さな家のライトアップ

平成最後の夏、シンボルツリーのアオダモをライトアップ。
馬子にも衣裳。

 

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家づくりの段階からこれを考えていれば目立たないよう地中からケーブルを回せたのだが、後付けとなるとどうしてもポーチのコンセントから電源を引かざるを得ない。そのケーブル取り回しの始末はまた別のエントリで。

あ、楽天とかで良く目にとまる「電源不要のソーラー発電ライト」とかは全く光量不足でライトアップにはとても使えない。金と時間の無駄なのでやめときましょう(と、自腹で勉強代を払った人間のコメント)。

 

赤鬼君はタダで村人にお茶やお菓子を振舞おうとした。だから村人は誰一人赤鬼君の家に近づかなかった

先日のエントリに関連するテーマのつぶやきが丁度タイムリーに上がっていたので一つ。
タダで何かを受け取ることに人は意外にも抵抗感を持つという典型的な例

 

togetter.com

もちろんこれが全般的に当てはまるわけではなくて、彼我に信頼関係があればこの限りでないことは言うまでもない。赤の他人にご馳走されるのは気持ち悪いと感じる人も彼氏や友人からの振舞いなら喜んで受け取るだろう。

ということで冒頭の赤鬼君も「おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」に続き「お代は五文でございます」と立て札に書き添えるだけでよかった。脳筋な青鬼君の提案はあまりに高コスト、且つ高リスクで勧められない。笑