カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

午后の会話

土曜日の夕刻、シェルターを開いて久しぶりに洗車していると、通りがかりの老婦人から声を掛けられる。

「これは…どこの車ですか。国産ではないですね」

「これはフランスの車ですよ」

「見たことないわね。これ珍しいんじゃない」

「そうですね、あまり見かけませんね」

「前を通るたびに気になってたんですよ。どんなのが入っているんだろうって」



日曜日の昼下がり、ポーチ周りを掃いていると、通りがかりの老婦人から声を掛けられる。

「これは何という木ですか」

「これは夏櫨という木です」

「へえ…ナツハゼっていうんですか。いい木ですねえ」
「何でこの木を植えようと思ったんですか」

「ああ、紅葉が綺麗と聞いたもので。雑木ですけど」

「ああハゼですもんね。いいですわね」
「植えたばかりの時はまだよく根付いてないみたいでしたけど、漸くちゃんと根が付いたみたいで」
「前を通るたびに気になって見ていたんですよ。今年はもっと元気になりそうですね。楽しみですね」


毎日夜まで帰宅しない単身者として近所付き合いとは無縁の日々を送っていても、こうして偶に古くからの住人に声を掛けられるのは、何となく地域の住人として認められたような気がしていいものだ。昨今では不審者には積極的に声を掛けるよう指導している町内会もあるらしいが、それが理由である可能性は考えないようにしておこう。

しかしご近所は見ていないようで見ているというのが少しばかり驚き。だが我が家のささやかなシンボルツリーが道行く誰かの目を楽しませているのであれば、植えた甲斐もあったというものだ。