カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

2月22日 Šiauliai

もうあれから一年近く経つのかー。早いもんだ
今年の冬の旅はなしだな…次行こうと思ってたところがあんなことになっちゃってるし、今年こそは裏の柵というか外構を完成させなければいけないし。限られた予算であれもこれもは出来ない。


*  *  *

リトアニア北部の街シャウレイを目指す。
リーガの長距離バスステーション2番ホームに到着したシャウレイ経由クライペダ行きのバス…

何だこれ。


同乗者は赤ちゃん連れの若い母親
ま、ありがちではあるが。リーガからシャウレイは超マイナー路線だという事はよく分かった。

このゴージャスなマイクロバスに乗ったまま越境し、やっとシャウレイに到着したのはもう深夜も近い時間。


翌朝宿を引き払うと再びバスステーションへ。
この街に来た目的、十字架の丘へ行く為にヨニシュキス行きのバスに乗る。

路線バスの方がちゃんとしてる
運転手に聞いてドマンタイ(アクセントは「ド」)のバス停で下車。
自分の他に誰も降りない。観光客ゼロ。オフシーズン。

見渡す限り人っ子一人いない中、目指す「十字架の丘」への道を示す十字架だけが風に吹かれて立っている。


とにかく丘を目指して歩く。

見渡す限り誰もいない道を歩く
雪混じりの風に吹かれながら歩く
ひたすら歩く
やっと見えてきた
小一時間も歩くとやっと目指す十字架の丘が見えてきた。

ここは墓地ではない。19世紀にロシアに弾圧された人々への弔いの為にリトアニアの民がこの地に十字架を建てたことに始まり、その後改めて支配者となったソ連の宗教弾圧に伴って何度も撤去されるも、その都度それ以上の数の十字架が建てられ続け、いつしか数え切れないほどの十字架が立つ丘となった。ソ連当局にブルドーザーで撤去されても焼き払われても立入禁止区域とされても、やればやるほどいつのまにか復活するどころか前より増えている十字架の群れ。しまいには当局もなんか気味悪いから放っとこうぜという感じになったらしい。宗教を否定する共産主義体制の為政者も、心に根ざす宗教心を芯から捨て去る事は出来なかったのかもしれない。

20世紀末にソ連から独立した後は以前の反動からか十字架フィーバー状態で更に増殖、世界中からクリスチャンが十字架背負って駆けつけ、今となっては十万本を超える十字架が乱立するカオスなゾーンに。何せ土地は幾らでもあるもんで区画整理も何もあったもんじゃない。






もうありとあらゆるサイズの十字架が
丘の頂にはマリア像
あの…十字架建ててくださるのは嬉しいんですが…皆さんもう少し綺麗に…(マリア)

世界中から集まった十字架は材質も大きさもデザインも千差万別。しかし大きさ3mを超えるような巨大な十字架はどうやって持ち込んだのだろう。バラして持ち込み現地で組立か。

サイバーパンクな十字架
日本からも
物乞い禁止の標識。ここで乞食を始めた奴は賢い


夏には賑わう十字架の丘も真冬の中では人影もまばら。
丘から見ていると、時折自動車が止まっては人が降りてくるのが見える。真冬だしそうやって来るのが当たり前か。そりゃそうだ、このマイナス何度だかの中を雪風に吹かれながら延々と歩いてくる物好きがどこにいる。ここにいる。

あ、誰か来た

敬虔なクリスチャンなら感涙ものの名所かもしれないこの十字架の丘だが、自分の率直な印象は
秘宝館みたい」。
その規模と迫力には確かに圧倒されるが、ごちゃごちゃしているせいか雰囲気は決して怖くない。それはいいのだが、カオスすぎて荘厳さに欠けるというか、何か田舎の名物おじさんが金と暇にあかせてこしらえたミニ博物館のようなそこはかとない胡散臭さが漂う。

というか一番の原因は恐らく、正面の一番目立つ位置に立っている胡散臭いイエスのせいではないかと。何か傾いてるし

YOKOSO!十字架の丘へ(イエス) 

こいつでだいぶ損してる。間違いない。