カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

一階の壁も左官

徳大寺有恒氏死去。中年以降の年代で氏に影響を受けた男性は相当数いるだろうが、自分のクルマ趣味というか自動車観においても福野に次いで大きな影響を受けた人物だったといえる。自動車がすっかり白物家電化してしまった現代においては、氏のように車をもって(恥も衒いもなく)ロマンを語る物書きはもはや現れる事はないだろう。その文章は本業たる自動車評論よりも寧ろ若き日の車仲間や往年の六本木族との交遊を綴ったエッセイや回顧録の方が面白く、粋さを残した当時の遊び人文化※1をどこかとぼけた客観的な視点で描写した文章は興味深く読んだものだった。葉巻と美女とトラッドとスポーツカーを愛し、野暮とミニバンが大嫌いだった氏の冥福を祈る。


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左官で色を変えてみようと思い立ったのは一番面積の大きい二階の北側の壁だが、手始めに一階の北側の壁も左官で漆喰を塗り重ねてみる事とする。これは震災で入ったクラックの補修も兼ねて。
一階の壁に鏝塗りする漆喰の色は「白土」、すなわち色は変えない。二階に比べてシンクやら吊戸棚やらキャビネットやら冷蔵庫やらで格段にモノが多い一階はできるだけ色遣いを少なくシンプルにしたいという事もあるが、一見して同じ色でもよく見ればローラー塗りと鏝塗りで違う質感の壁が混在するのも面白そうな気がするし。という事で今回のDIYは、一階と二階のそれぞれ一番大きな壁一面の左官工事というなかなかに大掛かりなものとなった。


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※1 テレビすら普及していなかった昭和30年代の東京で学生の身分で外車のスポーツカーを乗り回し、麻布や六本木を遊び場に出来た遊び人は紛れもなく良家の子弟。