カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

猫の首に鈴

カール・ゴッチと同じ誕生日である我が家の新入りが無事月齢6か月を迎えたのとほぼ時を同じくして、首輪屋さんに注文していた新しい首輪がとどいた。

 

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暗青緑色のベルベット地に蝙蝠を象った鈴。これまで付けていた首輪は鈴なしのサイレント仕様だったのだが、考えた末に鈴付きでオーダー。

猫になんか残飯に味噌汁ぶっかけた猫まんまを与えておけば十分と思われていた昭和の昔とは違い、動物愛護意識の高まった現代日本においてはかつて当たり前だった猫の首輪の鈴に対しても否定的な意見が目立つようになった。

曰く、首元の異物の存在がストレスとなる。人間より遥かに鋭敏な猫の聴覚には尚のこと、絶えず音を立てる鈴の音はストレス以外の何物でもない。首輪ですら異物としてのストレッサーになるから出来ればつけるべきではないのだ。況や鈴においておや。

言われてみれば尤もな意見であるにもかかわらず、我が家の居候に鈴をつけることに踏み切った理由は主に二つ。

 

1.室内の事故防止

気配を消すのが得意な動物である猫に音もなく背後に忍び寄られたらそれに気づくのは至難の業。我が家ではねこふんじゃった事故こそ発生していないが、振り向きざまに足を引っかけてしまった小事故は既に何回か発生している。足元に居候が蹲っているかもしれないと常に想定して注意深く振り向けば問題ないのには違いないが、365日24時間片時もそれを忘れずにいることができるなら世話はない。人間は忘れる動物でありミスをする動物でもある。そして偶々別のことに気を取られて無造作に振り返った、そのたった一回が小さな居候に致命傷を与えるには十分な機会となりうる。体重差は20倍、我々が象に踏まれたり蹴とばされたりしたときのことを考えれば呑気に童謡にして口ずさんでいる場合じゃない。注意一秒怪我一生。

また怪我をするリスクは人間様も同じ。これから老化の一途をたどる身としては、思わぬ足元の障害物で足がもつれて転倒したり足を取られて階段から転げ落ちたりするリスクは年を取るごとに高まりこそすれ低くなることはない。

鈴の音で居場所が分かればこれらのリスクを確実に軽減することができる。

 

2.脱走時のサルベージ対策

十分気を付けてはいるが、それでも万一脱走された時のことを考えてみる。

猫の習性からして、初めて接する外界の中を一目散に走っていくことは考えづらい。外に逃げ出したとしても暫くはそう遠くに行かず、環境に慣れるまで近所をうろうろしている可能性が高いだろう。その間に、遠くに行ってしまう前に見つけ出して保護することができるかどうかが文字通り生死の分かれ目となるのだが、身体が小さく隠れるのが得意な(しかも犬と違って三次元で動く)この生き物を見つけ出すのに鈴の音は有力な手掛かりとなるに違いない。逆に言えば鈴がない場合はある場合に比べて発見・保護に至る可能性は随分低くなるだろう。*1

 

我が家の結論

このように鈴をつけないことのリスクは明確である一方、鈴をつけることのリスクは実は明確ではない。「100匹の猫を鈴つきと鈴なしのグループに分け鈴の有無以外は全く同じ環境で十年にわたり飼育したところ、二つのグループで疾病罹患率や寿命に有意の差がみられた」という調査結果でもあれば明確なリスクありといえるが、世界の誰一人としてそのような統計的な調査分析は行っていない。あくまで鈴はストレス「となるに違いない」という推測に過ぎず、そしてストレス耐性には大きな個体差があるということは我々人間を見ても明らか。また大人と比べ子供の方が環境変化への順応性が高いのは人間も犬も猫も変わらず、であれば猶のこと鈴をつけるならば成獣となる前の今しかない。何年か経ってから「やっぱり危ないから鈴つけようか」となっても手遅れ。何年も鈴なしで生きてきたところに突然出現した首元の騒々しい異物はそれこそ甚大なストレッサーとなってしまうだろう。その逆、昔から付けていた鈴を外すならばこれはいつでも出来る。

これら諸々を秤にかけた結果が首元の黒い鈴。

装着直後は見ていて気の毒なほど嫌がっていたが、一晩経ったらけろりとしているように見える。

しかし前述のとおりストレスには個体差があり、我が家の新入りのストレス耐性の程度は今もって未知数(何十回叱られても同じ悪戯を繰り返す程度にはあつかましいが)なので暫くは様子を見るしかない。明らかに元気がなくなったり食欲が落ちたり下痢が続いたりなど明確なストレスサインが見られるようであれば、理屈や能書きはどうあれやはり外すしかない。

 

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と書く今回のエントリをアップする直前にPCを引っくり返して電源を落とし、一から書き直しさせて得意げな居候。それだけ図太けりゃ大丈夫だー(呆)

 

 

*1:同様の理由で首輪をつけないという選択肢もない。野良ではないと一目でわかる首輪をつけていない猫が捕獲された場合に悲惨な運命を辿るリスクは首輪付き猫と比べ格段に高くなることは想像に難くない。