カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

しぼるひかりをあてる

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ひかりをあててしぼるっていう映画はいまいち面白くなかった。実際に起こった猟奇的な殺人事件をベースにした映画となれば犯人の告白に基づいてその異常心理が丹念になぞられていくのかと思いきや、展開されるのはありがちな男女の愛憎劇。結婚生活の期待と現実のギャップやDV、そこからの共依存などは別に珍しいことでもなく、それをもってあのラストシーンに至るのはやや唐突感が否めない。実際の事件では被害者のDVを受けても逃げるに逃げられない犯人の心の葛藤があったのだが、その辺の人物像の掘り下げが不十分なので、事情を知らず見ている側はなぜDVが始まった時に主人公が逃げ出さなかったのか理解できない。主人公に今一つ感情移入することができないせいで、見ている側もなかなか映画の世界に入り込めない。

誰しも経験のある「やらかした時の焦燥感」。睾丸がきゅっと引き上げられるような*1あの焦り、衝動的に殺してしまってからその何十倍もの焦燥感に追い立てられて正気を失っていく主人公の心理を、自宅付近でブラックホールのように口を開いた夜の代々木公園の闇*2を象徴的に差し挟みながら展開していった方が良かったのではないか。

結論からいえばこの映画でも恐怖は味わえなかった。ということで「ひかりをあててしぼる」は面白くなかったが、「しぼるひかりをあてる」はとても面白いという話。


この春に一階DKのスポットライトを交換。

新しいスポットライトはE17バルブ専用で、これまでのスポットより細く小さい、形状は何の変哲もない筒状のシンプルな白いフード。

それまで使用していたスポットライトはごく普通のE26LED電球との組み合わせで、あまり光を絞り込まずほぼ満遍なく部屋を照らしていたのに対し、新しいスポットライトは径の小さいフードと照射範囲15度のLEDスポット電球との組み合わせを以て、文字通りのスポットライトとしてごく狭い範囲を強く照らすようにした。 

 

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下から見た図。左右に大きく角度をつけられているのがよく分かる

 60W相当の6.5WLEDハロゲン電球で強い光を当てる先はDKの両端。

一方の光は玄関近く、古いキャビネットの上に鎮座するロシア生まれの猫を照らし、 

 

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インペリアルポーセリン本店で捕獲。アクリルケースで居候のいたずらから保護

 もう一方は部屋の奥に位置する居候の食卓を照らす。

 

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そして真ん中の三つ目、4WのLEDハロゲンは真ん中のテーブルを照らす。

 ごく狭い範囲を強く照らし、離れたところは暗いまま。空間全体の照度は落ち、明るいところと暗いところのムラが強く出るようになったが、それが意外にいい。光に強弱をつけることで空間に奥行ができ緊張感が生まれ、小さなDKがなんだか広く見えるようになったのは意外な発見。

夜はすごく魅力的に見えた街でも昼の光の下では何ということのない平凡な眺めで幻滅した覚えは誰しもあると思うが、逆に言えば光の当て方ひとつで平凡な空間でもドラマチックに演出することが出来るということ。

照明は面白く、奥が深い。よく分からなくてもとりあえず「間接照明とスポットライト」を適当に組み合わせれば何となくお洒落に見えるから、手っ取り早く部屋の印象を変えるには一番お手軽な手だったりする。

*1:男の子なら分かります

*2:犯人は後に「真っ黒な夜の代々木公園が何とも不気味に見えた」と供述している