10月最後の日曜に訪れた*1国立近代美術館工芸館のインゲヤードローマン展。
彼女はプロダクトデザイナーなので展示品の殆どは売り物であり(我が家にも二つばかりある)、計算された照明と配列で整然と並べられた様は壮観ではあるものの、一点物としての希少価値がある訳ではない。
見所は15分もあれば見終わる展示物よりも寧ろ出口の前に設けられたスクリーンで再生される彼女のロングインタビュー。
物づくりにおける彼女の美学と矜持、細部への拘り、日本と日本の職人との縁、またオリジナリティに価値を認めない昨今の消費者への失望と葛藤など、およそ30分に渡り余すことなく語られていて見応えがある。
母国スウェーデンの工房も少しだけ登場している。彼女の作り出すガラスの器と同じように華美とは無縁で線が少なくシンプルだが清潔な美しさを持った、白く四角い小さな家。
インタビュー映像はループ再生されているが是非初めから最後まで見通すべし。したがって閉館ギリギリに訪れるのはお勧めしない。
展示期間は2月までと長く設けられており、(訂正:12月9日までなので今週末で終了。フェルメールはさて置いてもこちらへ急げ!)前述の通りの事情で観客も少なくゆったり見れるので大混雑のフェルメール展にうんざりしたらここで骨休めするのもいいと思う。といって梯子するには少しばかり遠すぎるが
初めて訪れた工芸館は明治期の築と思しきレンガ造りの壮麗な建築物で、気になって調べてみると戦前は近衛師団司令部が置かれていた由緒正しき建物。さすがに旧軍のエリート集団にはそれなりの職場が用意されていたものだ。実に羨ましい。
*1:S氏と被ったが後追いではないというアピール。笑