カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

1年点検

引渡し後1年(と4ヶ月)を経過して、S氏と幹建設若監督のK氏が家の一年点検の為に見えられた。
入居後一年の間に生じた不具合を申し立てて修繕・調整を申し出る機会なのだが、困った事にこれまで特に不具合もなく、K氏とは昨年の引渡しの時以来の対面となるのにものの一分で話す事がなくなってしまった。

「どうですかその後。何か不具合はありますか」
「いやー何もないですねー(笑)」
「そうですかー(笑)」
「……(笑)」
「……(笑)」

でくの棒のように突っ立って曖昧な笑みを浮かべているだけの意味不明な家主を尻目に、二人は一階、二階と外構を一通り点検して回る。基礎にも特に異常は認められず、若監督K氏は早々に引き上げていった。

聞けば一年点検時に不具合として報じられるので最も多いのは建具類、湿気等により開閉し辛くなったりするケースがままあるらしい。この家は建具らしい建具が存在しない(開きっぱなしの引き戸が一箇所だけ)ので、ないものに不具合が生じるわけもなく、この点は問題なくクリア。床下収納ボックスを外して床下を自己点検した限りでは水周りの漏水などは見られず、まずまずよろしい※1

入居後一年などあっという間で、そのあっという間を二十回繰り返せば築二十年。この分では長いようで意外に短いのかも知れない。
いい感じに古びてくれればいいのだが。目標はいつぞや訪れた柳宗悦邸。ああいう感じに渋く古びて黒光り、しかしどこか可愛らしい家というのが理想的。そして家に合わせて自分も渋くかつ可愛らしいジジイを目指したいところだが…どちらが実現困難だろう。

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※1 強いて言えば階段を昇降する度に、一部の蹴込み板として張られているアクリル板が踏み板と擦れてギュウギュウ音を立てる事くらいか。これは特段気にもならないし実害もないので問題なし。対処法(間にラバーを挟む)も分かっているので、どうしても気になるようになら自分でいつでも直せる。