カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

鳥牛之家

土曜は昼からポーチ床面に残りのクリスタルシーラーを再塗布。
ポーチ床のモルタルは既にクリーナーでも落ちない汚れやらシミやら剥がれやらが無数にあるので、仕上がりのムラなど気にしない。とにかく無心で塗るべし。
こいつめこいつめと言いながらひたすら残りのシーラーを塗り込み、立ち入り禁止の紐を入口に張って作業を終えると、バイクのキックスターターを蹴り下ろして西へ向かう。
S氏の手がけたLWH003…もとい「鳥牛之家」(飯屋じゃない)の完成オープンハウスを見学する為だ。

だがこの冬一番の冷え込みとなったこの日は、好天にも関わらず寒い。超寒い。
インナーにもう一枚着てくれば良かったと後悔しつつ新青梅街道から左折して住宅街に入り込むと、ほどなくして前方の電柱に現地への案内標識が。「現場発表会」と青字に白抜きで大きく書かれ、その下に矢印で方向を示した紙が括りつけてあるではないか。すごい。
おおこれは本格的だなあ、やるなあと感心しつつ、矢印に誘導されるまま右に左に曲がって辿り着いたその先には

どこかの建売住宅。うん、多分こんなオチだろうと思ってた。

素知らぬ顔でUターンしたものの完全に方角を見失ってしまい、その後たっぷり15分ばかり、迷路のような中野の住宅街の隘路を堪能し…要するに道に迷って走り回った。
ダサい。超ダサい。

路地の奥に佇む鳥牛之家にようやくたどり着く頃には身体もすっかり冷えきり、かじかんだ口がうまく回らず施主の「鳥」さん※1への挨拶の言葉ももつれてしまう始末。

「し新築おめでとうございますここれつまらなあばばあばばばば」

怪しい。超怪しい。

鳥牛之家。くどいようだが飯屋ではない

アイボリーホワイトの外壁とチャコールブラウンの花台のコントラストが印象的な鳥牛之家は、決してデコラティブではなく素朴だが、どことなく垢抜けて洒落ているという、いかにもS氏らしい家だった。自分の家とほぼ同じ建坪なのに随分と広く感じるのは、特徴的な階段でつながるロフトの広がりのせいか。
家の中は真新しい杉板の匂いが気持ちいい。そして一階寝室の内壁は施主ご夫婦とS氏がコテで漆喰を塗って仕上げたという。いいなあ助っ人がいて

「で、Sさんはどこを塗ったんですか」

「この辺を…少し。」

「へえ…」

「あんまり見ないで^^」

「分かりました^^」

すかさず一歩前に出てまじまじと見る。※2
素人には難しいと言われるコテ塗りだが、ちゃんと仕上がっている。
「最後は漆喰が足りなくなっちゃって、この辺はやっつけなんですよ」
と鳥さんは謙遜するのだが、寧ろそういう箇所があったほうが後々までの思い出になっていいと個人的には思う。それは悔恨と共にではなく、微笑みと共に思い返されるものに違いないから。

アイボリーホワイト×グレーシルバー×ダークレッドはセンスのいい組み合わせだと思う

マニハウスに続き今回が二回目のオープンハウス見学。※3
オープンハウスは幸せのお裾わけと書いた事があったが、やはりいいものだ。
これから新しい生活が始まる真新しい家は希望そのもので、施主がいればそこは喜びと幸福な空気で満たされている。
それは明確にそこにあるのだ。家が完成して幸福でない施主などいないのだから。
その陽性の空気に触れるだけで、無関係な自分も幾らかは幸福な気分になれる。
だからいい。

森林浴の後のようないい気分で鳥牛之家を後にしたものの、帰路は辛抱たまらずカフェにビバーク
いや本当に寒かった。


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※1 噂には聞いていたが本当に若い。院生でも通用する。だが家を建てられる位だから、ただ若いだけではなく相当にしっかりしているのだろう。貯金額二桁だった自分の二十代の頃とは比べ物にならない。
※2 せっかくのネタ振りをスルーしてはいけない。
※3 S氏のオープンハウスは何故か別の予定とバッティングすることが多い。いや本当に