カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

キレと逆ギレ

手摺り全長は2700mm、壁に取り付ける金具はアイアン。
それなりに重いので友人にヘルプを頼み、壁に取り付けるまで手摺りを保持してもらう。


「始めと終わりで高さを合わせないとおかしくなってしまうだろ」
「高さを計測するから、手摺りを壁に当てたまま動かさないで持っといてくれ」


「分かった」


「……。」(階段を上り、メジャーで手摺り下端の高さを測る)
「……。」(階段を下り、手摺り上端の高さを測る)


「どうだ?」


「……。」(もう一度上端の高さを測る)
「……。」(さらに下端の高さを測る)


「あれ?」(計測するたび高さが違う)


「そろそろ重くなってきた」


「……。」(もう一度上端の高さを測る。微妙に合わない)
「おっかしーなー」


「いや重いんだけど」


「………。」(考え込む)


「おーい?」


「…………。」(そもそも垂直にメジャーを当てられているのか疑問になってくる)


「重いって」


「!あーちょっと待って」(ロフトへ上がる)


「……。」


「あったあった」(裁縫箱を抱えて降りてくる)


「何してんの。離していい?重いから」


「んーちょっと待ってー。これをこうして…」(糸を取り出し五円玉に結えつける)


「いや、だから」


「んーちょっとまってー。これでどうだ」(五円玉を垂らして手摺り上端に当てる)


「まだかよ」


「んーちょっと待ってー」(糸の長さをキープしたまま階段を降りる)


「おい」


「んーちょっと待ってー」


「……。」


「んーちょっと待ってー」


「だから重いって言ってんだろがさっきから」


「だからちょっと待ってって言ってんだろがさっきから」



我儘を言える友人がいて助かります