カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

Smaller, Smarter


車でも道でもマックのドリンクでもとにかく無駄にでかい、「大きいことはいいことだ」の権化のようなアメリカという国で敢えて小さな家を選ぶのは日本でそうするよりも遥かに難しいことであろう事は想像に難くないが、Not So Big運動を説くThe Not So Big Houseシリーズはこれまで米国で累計120万冊を売り上げているというから潜在的な需要はそれなりにあるのだろう。経済的な理由やエコロジーの観点からなど理由は幾つかあろうが、消費文化を極めた米国で「足るを知る」という仏教的な思想が受け入れられつつあるというところが面白い。

大きな葛籠と小さな葛籠、並べられれば人はとりあえず大きな葛籠に飛びつく。何も考えていない人は間違いなくそうする。勿論よく考えて大きな葛籠を手にする人もいるだろうが、大きな葛籠を手に入れられるのに敢えて小さな葛籠を選ぶ人は例外なく考えている。熟考している。広々とした家は確かに気持ちいいが代償もまた大きいわけで、Bigger, the Better の対極にある Smaller, Smarter の価値観がもっと広がれば、より多くの人が無駄なプレッシャーから開放されて人生を楽しむ事が出来るだろう。

提唱者のジェイ・シェイファーの言葉「米国人は大きくて安い家が好きだが、それはファストフードを好むのと似ています」は興味深いが、何もそれは米国人に限った事ではない。とりあえず大きな方、とりあえず広い方、大は小を兼ねると考えてしまうのが人の性。日本でも「広い、安い」を売りにしたファストフードを腹いっぱい詰め込んだ客が食中毒で大変なことになった騒動は記憶に新しい。