カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

LWH003はライトウェイトハウスのスタンダードとなるか

S氏に誘われて11月最後の週末にLWH003を訪問。
LWH003:立川の家はLWH002から五年ほどの間をおいて建てられたLWH003シリーズ最新作だが、完成からほぼ一年を経過したところを訪問した今回でLWHの新たな標準形が見えてきた。



確かに近い色

LWH003の外壁は家族の一員であるロシアンブルー(名前はジジ)の毛並みに合わせたグレー色。周囲の家と比べてもコンパクトなサイズと相俟って控えめな佇まいのLWH003だが、中に入ればその印象はいい方向で裏切られる。
ドアを開きモルタル仕上げの玄関をあがるとほどなく階段。LWHの基本間取りではデッドスペースである階段は端に寄せて出来るだけ大きなモノスペースを確保するのを優先していたが、LWH003ではそれをあえて家の中央に据えることで、大空間の代わりに廊下やドアで仕切らなくとも周囲に自然に分けられる複数の空間を持つようになった。確かに複数の住人が住む家としてはこちらの方が有効である場合も多いだろう。
LWH003では南側の空間の真ん中に造作したキャビネットを置き、ご夫婦と小さな子供一人に丁度いいサイズのダイニングとキッチンとの二つに分けていた。自由度が高く、生活環境の変化に応じどのようにも出来る。




二階建てである筈のLWH003の二階からはさらに上に向かって階段が伸びていて、その先にはロフトというより小部屋と呼ぶのが相応しい十分な高さと広さを持ったロフト階が広がっている。
高さ1mにも満たないLWH002の物置ロフトとは違って立派に部屋として機能する広々としたロフトの恩恵で、LWH003は登記上の床面積こそLWH002とほぼ同じだが実際にはずっと広く感じられる。
というか事実広い。

コンパクトな外観からは想像がつかないまさかの三層、その要となる存在感のある階段がこの家のアイコン。添えられた目隠し用の杉材の縦格子が空間を上下に長く見せ(縦縞の服は着る人を長身に見せるのと同じ)、内部のスケール感を引き立たせるのに一役買っている。


ちゃんとした階段がロフトまで続く

裏から

ロフトまわりのダイナミックな造形とこちらを見つめるアルパカ

天窓はロフト階と二階のあかりとり

ちゃんとしたロフト階のちゃんとした窓

リビング天井。抑え目な照明がいいセンス

内装はS氏お馴染みの無垢無塗装の杉材。
杉を白木のまま用いた清楚で簡素でどこか和を感じさせるスタイルはS氏が得意とするもので、利休好みならぬS氏好みと言っていい。
足すのは容易だが削るのは難しい。物足りなさを感じるぎりぎり手前で止められている抑制の美がS氏の手掛ける家の特徴でもあり、白木の杉だけが持つ清浄な雰囲気は確かによくマッチしている。この風情を活かすならば白木は白木のままで手を加えず自然に使い続けるのがいいだろう。どこかのなんとか002の家主のように階段(あれは杉ではないが)を塗るような余計なことはしない方が無難。しかもあいつまた塗ったらしいぜ(えっ)


床材は厚さ一寸幅七寸の堂々たる杉板。子供の手と大きさの違いに注目

まとめると、控え目な外観からは意外なほど広い内部空間を自然かつ合理的に分け、内装は楚々とした杉材仕上げで床には厚さ一寸幅七寸の杉板を贅沢に使い、住人は小さな子を含む家族とペット。
外観・内部構造・内装から住人に至るまで、これこそS氏の唱えたLWHの標準形となるべき家ではないだろうか。一作目二作目と本来の想定と違うおたくの独身者用の家が出来上がってしまい妙な色が付きかかったLWHシリーズだが、三作目にしてようやく標準的な作例が出来てS氏も愁眉を開いていることだろう。実例ができたことで家族が住む家としてのイメージが湧きやすくなったこともあり、これで悲願の三桁達成に向けて受注が加速するに違いない。多分ね



LWH003ご主人が手ずから設置した温風器ユニット。パクりたいアイデア


なおLWH003の家づくりは典型的な夫唱婦随型。DIYにも前向きなご主人がこの家のイメージの源泉のようで、この点で婦唱夫随型のsatosatoとは全く対照的なのが面白い。satosatoではアイデアを出すのは主に奥様で、旦那様はそれを承認しつつ年末の忘年会でPPAPをやるという役割分担。世間一般ではどちらが多いのかしらん