カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

おろしや国一週間(21)ミハイロフスキー劇場に行こう!

マリインスキー観劇から時は下って2018年12月19日。
再びサンクトペテルブルクを訪れた自分が向かったのはもう一つの名門であるミハイロフスキーバレエ。レニングラード国立バレエと言った方がオールドファンには分かりやすいかも知れない。

ミハイロフスキーバレエの本拠たるミハイロフスキー劇場は堂々たるマリインスキー劇場と比べ比較的小ぶりで小劇場という通り名で呼ばれていたりするが、その実力はマリインスキーにも引けを取らない。というか同じ町にあるだけあって人材の行ったり来たりが活発で、マリインスキーから移籍するダンサーも多いのだからさもありなん。マリインスキーを去った後のルジマートフが属したのもこのミハイロフスキーバレエに外ならない(今は第一線を退いて監督という立場なので残念ながら舞台では見られないが)。

交通の便が悪いマリインスキー劇場と比べ、都心に位置するミハイロフスキー劇場へのアクセスは非常に楽。最寄り駅は青い二番線のネフスキープロスペクトだが冬宮から歩いても10分程度、スパース・ナ・クラヴィーからなら5分とかからない。

 

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ブルーとグリーンの交差するところがネフスキープロスペクト

 

今回もチケットは劇場公式ウェブサイトから購入。
今度はQRコードが付いているのでペーパレスのEチケットで間違いない。

 

mikhailovsky.ru

 

演目は奇しくも前回と同じシェルクンチクЩелкунчик、イコールNutCracker、すなわちくるみ割り人形。奇しくもというのは半分嘘で半分本当、まずスケジュールを見て歌劇の日でなくバレエの日を選んだのは故意。しかし旅の日程で選べるバレエの日のスケジュールが軒並みくるみ割り人形であったのは偶然。というかクリスマスシーズンはどうしてもくるみ割り人形の日が増えるのだから偶然というより必然に近いが。

 当日は午前中は スモリーヌイ修道院、カフェシンガーで一息ついたら午後は冬宮。その後はカフェの梯子などしつつ街をぶらぶらし、日が暮れる頃に一旦ホテルに戻るとブーツを磨き、N-3Bの下にジャケットを羽織って劇場へ向かう。
前述の通り地の利に優れたロケーションであればマリインスキーのように地下鉄を乗り継ぎ雪と泥で靴を汚しながら苦労して歩くこともなく、宿からは綺麗に除雪された道をぶらぶら歩きながらで楽に辿り着く。

 

 

 

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シンガービルの目の前の運河を渡ったらすぐ左折、そのまま真っ直ぐで右手に劇場

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後一つ角を曲がればもう劇場というところまで到達。
今回は珍しく順調だ。順調すぎる。などと思いながらふとスマホに目を向けた瞬間に目玉が飛び出そうになる。
「バッテリー残量6%」
部屋を出るときは確かに70%近くあったiPhoneのバッテリーはマイナス10度の極寒下で急速に消耗し、劇場まであとわずかという地点で早くもバッテリー切れ寸前にまで低下しているではないか。

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PDF起動にもバッテリを使う、少しでも消耗を抑えるためスクリーンショット

iPhoneのバッテリーの持ちの悪さと低温下における耐性のなさには定評があるものの、それにしても限度というものがあるだろう。
しかしここで文句を言っても始まらない。Eチケットが入っているスマホのバッテリー切れはそのまま入場不可を意味するが、生憎と充電用のバッテリーは宿に置いてきてしまっている。完全放電してしまったら短時間では再充電出来ない、今来た道をホテルまで取って返して部屋で充電し、また歩いて劇場に…ああ絶対に間に合わない。

やはり一筋縄ではいかないもので、順調転じて大ピンチ。
入場前のバッテリー切れだけは避けなければならない。咄嗟の判断でポケットから氷の塊のように冷え切ったiPhoneを取り出し、腹巻よろしくおもむろに腹に突っ込むと、その冷たさに飛び上がりながら一目散に劇場まで走る。

何とかバッテリー切れ直前で劇場に入場出来て一安心。
暖房が効いている劇場の中でたちまち元のバッテリー残量を取り戻す現金なiPhoneと、それに気をよくして早速劇場の様子など撮りまくる現金な持ち主。

  

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緞帳にもシェルクンチク(くるみ割り人形)の文字

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小劇場の通り名どおりマリインスキーよりは小ぶりなホール

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この手の施設には必ず模型が展示されているのは何故だろう


いかにも劇場然としたマリインスキー劇場に比べ、ミハイロフスキー劇場の外観は控えめで学校のような佇まい。大ホールの装飾も豪奢なきんきらきんではなくショートケーキのように控えめで可愛らしい。LWHオーナーとしてはこちらの建物の方が好みではある。

 

今回の座席はまた奮発して最前列中央、お陰で客席と舞台の間にあるオーケストラまでよく見える。

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当初はまばらだったオケ席も開演が近づくにつれ奏者で埋め尽くされ、各々が最後の調整に勤しむ。今にして思えば必ずオケがついていた8時だヨ全員集合はぜいたくな舞台だったななどと思いながらその様子を眺める。

 

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休憩時間に売店に並ぶがなんと現金のみ。これはいただけない

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場内の軽食カウンターにはCash Onlyの表示が。現金を一切持ちあわせていない身では指を咥えて眺めるしかないが、食べられないとなると妙に美味そうに見えるのが不思議。しかし今どきキャッシュレスNGはないだろう。
とはいえ郷に入っては郷に従え、ミハイロフスキー劇場にお出かけの際はキャッシュレス派であっても最低限1500ルーブル程度は持参することをお勧めしたい。

 

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カーテンコール

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またしても大満足の帰り道