カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

お金では買えないもの

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コロナ自粛の最中にいらっしゃったライターさんとカメラさん。

100life.jp

 

美しく書いていただいたのは些か面映ゆいが、こちらが口で軽く言ったことも後でしっかり調べて裏を取って書く丁寧な仕事ぶりはさすがプロ(何様)。

インタビューの中で「どこが一番気に入っていますか」と聞かれ、その時は一年前に仕上げたばかりの玄関と答えた(ような気がする)。しかし後になってよく考えてみると、この家で一番気に入っているのは玄関でもキッチンでもリビングでもなく、木の床がそうかもしれない。これこそ唯一無二のものだからだ。

大抵の「いいな」は金があれば手に入る。他人が着ている服も靴も腕時計も、金を出せばそっくり同じものが手に入る。家にしても同じ、玄関タイルが気に入れば同じタイルを買って同じように貼ることが出来るし、キッチンが気に入ればおなじシンクとタイルを買ってそっくりに作ることが出来る。ソファが気に入れば同じソファ、テーブルが気に入れば同じテーブルを揃えることは、金さえあれば誰にでも出来る。

ただ我が家で使いこんだ床は同じように使いこまなければ、10年間生活を共にする中で毎日乾拭きをして*1時々は濡れ雑巾を掛け、また時には油を摺り込んで使いこんできた床だけが(生活を共にした証である傷や凹みも込みで)醸し出す味は金を積んでも手に入らないもの。これからも時間の経過とともに10年後には10年後の、20年後には20年後ならではの深みを増していく筈だ。

ヴィンテージ品には現在のプロダクトでは考えられないコストがかけられているところにまず惹かれるが、時の洗礼を経た物だけが持つ味わいも大きな魅力の一つ。10年を経た我が家の床もそのように深化していって、いつか我が家がなくなった後もどこかの建物で古材として使われるようになれば最高だろう。

 

 

*1:掃除機を置く場所がないので毎日ワイパー掛け。ウサギにしても猫にしても、獣がいると家は激しく汚れるので毎日の床掃除は欠かせない