一夜明けて、さて今日はどうしようかな。
オンシーズンの夏であればパフィンを見に行くツアーとか滝を見に行くツアーとか様々なワンデーツアーがあるのだが、生憎とシーンズンオフ真っ盛りなのであまり種類もなく。自転車で島巡り半日コースというのは少し惹かれたが、ここはひとつ自力でどこかに出かけよう。
落差30メートルの海に注ぐ瀧、ソルヴァグスヴァテン湖
朝食を食べてベッドでゴロゴロしながらスマホをいじって探した見どころが、Sorvagsvatnソルヴァグスヴァテン湖。
そしてこの風景に心を鷲掴みにされる。
ロケーションはヴォーアル島の空港隣接、であればここからも近い。
よし今日はここに行こうということで、まずは昨日降り立った空港まで移動。宿からまたバスセンターまで歩いていく。
フェロー諸島全景はこちら、①トーシャウンから②ソルヴァグスヴァテン湖まではここから空港行のバスに乗る。ヴォーアル島までは海底トンネルで事実上の陸続き
バスを待つ間、各島へのフェリーの時刻表など眺める。
このあたりのフェリーに乗って違う街に行ってみることも考えたが、この時刻表ではロスタイムが多すぎる。午後4時には暗くなる冬の日であれば時間は最大限有効に使いたい。とあれこれ考えを巡らしてしまうのも、バケーションタイムに絶対的に恵まれない日本人の悲しき性。
空港行き(Sorvagur行き)バスは9時35分、空港着は10時15分。
空港までの短い道のりでまた風景が目まぐるしく変わる不思議な島
ソルヴァグスヴァテン湖を歩く
案内通り、ソルヴァグスヴァテン湖は空港から10分も歩かないうちに見えてくる。
一時間も歩かないうちに道がなくなる。どうやらここからは滝まではいけないらしい
ルートが違う?しかし湖に沿って歩けばいつかは先端に到達する筈。という訳で腹をくくって誰もいない湿原を湖に沿ってひたすら歩く
フェロー諸島の低地は比較的気温が高いらしく、途中の小川も凍り付くことなく湖に注ぎ込んでいる。橋も道もないから飛び越えるほかはないのだけれど
ヴォーアル島の氷雨コンボの前にリタイア
と、ここまで来て寒さが耐えがたくなってきた。フォロー諸島独得の気候なのだろうか、氷雨が吹き付け、吹き付けたかと思うと止んで風が吹き、止んだかと思うとまた強い吹雪が吹き付ける。東京では体験したことのないこの果てしなく続く断続的な吹雪と氷雨で全身ずぶ濡れ、体温もモチベーションも限界まで低下してしまう。身体は冷え切り、足元はぬかるみに取られ、そして見渡す限り誰の姿もなく、こんなところで行き倒れはカッコ悪すぎるので体力が残っているうちに引き返すことに決め、しばし雪のソルヴァグスヴァテン湖畔に佇む。
結果からすれば目的地である絶景にはたどり着けず、ただひたすら辛い思いをしただけのこの日のことが却って強烈に心に焼き付けられているのも旅ではよくあること。見渡す限り誰も見えない、誰も聞こえない、ただどこまでも荒涼としたこの世の終わりのような光景というのも都会暮らしでは得難い体験。何か思いきり叫びたい人、泣きたい人には是非この季節外れのソルヴァグスヴァテン湖畔をお勧めしたい。泣こうと喚こうと羊を追いかけようと誰の目を気にすることもない。ただしゴアテックスのオーバーパンツを忘れずに。ジャケットは防水でも下半身がずぶ濡れになるのはちょっと辛いね