カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

いいものと好きなものは違う話

今年に入って乗り換えた一台。

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GW休業のスーパーレーサー前

なお先代はこちら

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七五三の氷川神社

いや全然違いますね。

先代バイク、購入当初は満足度が高かった。メーカー肝煎りの最新機種はパワフルで電子制御てんこ盛り、風を遮るウィンドシールドのおかげで高速巡航も楽にこなせ、オートクルーズまでついてどこまで走っても疲れ知らず。もう至れり尽くせりの一台は当初の目論見通り、老齢で故障がちな車に代わる遠出の道具としての機能は申し分なかった。つまり「いいもの」だった。

しかし時間の経過とともに内心に少しずつコレジャナイ感が出てくる。巨大でヘビーな車体は街中での取り回しに難儀するし、プラスチックを多用した外装の質感も、レトロポップではあるが渋味に欠ける色遣いも、照明性能は高いがコミカルに見えるダブルヘッドライトも、どうも自分が本当に求めていたものとは違うんじゃないか。なんか違う。
内心で膨らんだ違和感を突き詰めていった結果、自分がより価値を置いていたものは長距離ランナーとしての機能性よりバイクとしての「らしい」佇まい*1そのものであり、「いいもの」を「好きなもの」と取り違えてしまう罠に(この年になってなお)嵌っていたことに気が付いた。

その反省を踏まえて次の一台では「好き」の赴くままに車体を選び、更にエンジンとホイールとマフラー以外は全て手を入れた(交換か加工か塗り直すか)結果、今度こそ「好きなもの」全開の納得のいくものに。プラ外装皆無=ウィンドシールドもカウルも皆無なのでとても速度は出せない*2し、排気量は同じでもパワーは劣るしその割に乗り味は荒々しいし、クラッチはやたら重くてクルコンなんて気の利いた装備もないので右手も左手もやたら疲れるし、はっきり言って乗り物としての性能は明らかに先代より劣るのだが、やはり好きなバイクを好きなように仕上げた満足感はそれを上回って余りあり、オフ車でもないのに(先代ですら行かなかった)山道に分け入っていって泥まみれになったり、まあ乗っていること自体が楽しい。

ということで自粛期間中のGWでも毎日のように乗り回しているのであった。しかし時間もお金も余計にかかったね

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電波の届かない山中。リアフェンダーぶった切ってるから泥はねがすごい。もうしません


「後になって軌道修正するのが難しい家を建てる際は自分の趣味嗜好の方向性が固まってからにした方がいい」とか偉そうに書いていた本人にもそれが出来ていなかったという一例。自分自身の真の欲求を把握するのはかくも難しく。

 

*1:ロー&ロングなシルエット、鉄の塊の質感、マットブラックベースの渋い色遣いで灯火類は出来るだけ小さく

*2:高速では法定速度プラス一割程度で巡航速度の限界。性能の問題でなく、それ以上は風圧との戦いでとてもリラックスして乗ってられない。否応なく安全運転を強いられる