カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

越南縦断(1)成田からノイバイ空港からハノイ市内

10時15分成田発QH413便

 

「バンブーエアウェイズ」とかいう聞きなれないベトナムの新興エアラインはLCCのようだがLCCではない、その証拠に成田空港の発着はLCC専用の第三ターミナルではなく、また機内食もきちんと出る。
という前情報の通りに、成田空港第二ターミナルからハノイに向かうQH413便の機内ではちゃんと機内食が出た。それでもシートはあっさりとしたもので背面に乗客向けのモニターがついていないところが格安エアラインらしい。
などと初めは思っていたのだが、各種コンテンツは機内のWIFIを通じ自身のスマホから受け取る仕組みとなっていることが分かって考えを改めた。確かにこちらの方が理に叶っている。乗客にはネトフリなどのコンテンツをスマホで見るスタイルが定着している前提で、映画や音楽あるいはゲームなどの機内エンターテインメントサービスは全てWiFiに乗せて提供することとして割り切る。そうすれば航空会社は高価なモニタ付座席やモニタの劣化あるいは機能の陳腐化による機材の入れ替え、故障修理、フライトの都度配布するイヤホンなどに一切のコストを割く必要がなくなるし、サービスを受け取る側である乗客も解像度が低く使いづらい座席モニタより自身のスマホを使う方がよほど便利なのだから送り手も受け手も共ににウィンウィン。*1
考えてみれば長期間の利用を前提にするのであればハードウェアは機能ごとに分離独立しているべきで、一つのハードに複数の機能を組み込んでしまうのは一見スマートで便利であっても長く使い続けるうちに不便さがはるかに勝るようになるのは想像に難くない。
古くはテレビデオとかツインファミコンとか、これらは出始めの頃から画期的と呼ばれる一方でどちらかが故障したら両方使えなくなるといった突っ込みも受けていたものだが、家づくりで考えてみれば浴室テレビやインターホンの類がそれに相当するのではないだろうか。スマホがこれだけ進化した現在においてはディスプレイの大きさ以外では全てにおいてスマホに劣る浴室テレビなどほぼ絶滅したに違いない*2のだが、もう一方はといえばこれが未だ健在。解像度が低くWiFiにもBTにも非対応で、遠隔操作はもちろんデータエクスポートすら出来ない旧態依然としたインターホンが今なおドアホンのメインストリームに陣取っているのは不思議でならない。14年前の我が家の建築仕様では勿論それ以外の選択肢はなかったのだが、今から家を建てるのであれば勿論あんな不格好で低機能で配線工事まで必要とする代物は採用しない・・・
などとつらつら考えつつ、手元のスマホを操って日本ではまず耳にすることのない聞きなれないV-POP*3をあれこれ試し聴きしたりしている内にハノイに到着。成田から6時間の旅程は「あっという間」と言えるほど短くははないが退屈を持て余すほど長くもない。東京から博多まで新幹線で5時間という実例を引き合いに出すまでもなく、アジアは欧州よりよほど身近な海外であることを改めて実感する。

ノイバイ空港は降機してバスでターミナルまで移動するスタイル
外国においては基本全てクレカ払いで通しているので少し逡巡するも、クレカが通じない場合もあることを想定し、空港内の両替所でとりあえず三万円をベトナムドンに両替する。*4インフレがよほど凄いのか、3万円は510万ドンほどの現地通貨に化けたのでなんだかものすごいお金持ちになった気がするが、1ドンが0.0058円ほどの為替レートとなるのでややこしい。以降は値札の値を見て「ゼロ二つ取って六掛け」でおおよその円換算を行うこととした。
ただ「いい加減デノミした方がいいんじゃない」と言いたくなるどのインフレにもいいところがない訳ではなく、文字通り一円の価値もない貨幣など巷間にはまるで流通していないので、(この後判明することだが)キャッシュレスどころか未だキャッシュフル社会であるこの国においては尚のこと、ポケットでじゃらじゃらと邪魔になる小銭に悩まされることがないことは旅人には大変助かる。
まとまった現地通貨を手にしたところでまずは落ち着こう。ということで、空港内レストランの窓際の席に着くと両替したばかりのドン紙幣を用いて入国して初のフォーを食す。
この国では結局フォーばかり食べていたのだが、その記念すべき一発目はハノイ空港。

香草類のサラダが無料で付いてくるのがこの国のデフォ

 

なんというか、旨くも不味くもない、「なるほど、フォーだな」以上の感想を持ちようもない何の変哲もないフォーとドリンクのセットは17万5千ドンでおよそ千円。うーん高い。空港内の飲食はとりわけ高くつくことを差し引いても高い。日本で食べるより高くついたことは心外だが、さすがに街中で食べるならこんなことはないだろう。そうでなくては困る。
旨くも不味くもない、確かにフォーだなというフォーを5分で平らげて一息つくと早速空港エントランスから外に出る。出口左手にある市内行きのバスが丁度到着したところなのでほぼ待ち時間なしでそのまま乗り込む。
人口800万人の大都市である首都ハノイだがなぜか地下鉄がない。また市内を巡る細かい鉄道網も発達していないので、ノイバイ国際空港からハノイ市内への移動はタクシーかマイクロバスか路線バスの三択となる。到着ロビーの風物詩であるぼったくり白タク運ちゃんの掛けてくる声を華麗に躱しつつ迷わず路線バスへ。
ロシアの地下鉄もそうだが、ベトナムも路線バスなどの公共インフラの価格設定に社会主義国の残り香が強く残っている。市内まで45分ほど走る路線バスの運賃は9000ドン、つまりおよそ50円強。激安だ。これでも数年前から5割近く値上げしているらしいが、白タクなら同じ距離でその百倍は軽くふんだくられるであろうことを考えると、日本では考えられない極端な価格差に奇妙さを感じずにはいられない。
 
 
汚れた車窓越しに見るハノイの空は白く曇っていたが、西に沈みつつある夕陽が綺麗に見えたので良い天気の日ではあったのだろう。今日はハノイには泊まらずにこのまま夜行列車に乗り込んでフエに向かう予定だ。

*1:ただスマホとイヤホンを持ち合わせていない顧客は一切のサービスを享受することができないが、そういった合理的な割り切りはJALANAは最も苦手とすることだろう。

*2:デジタル放送に切り替えられる前に導入してしまった人など良い面の皮、大枚叩いて取り換え工事を行わなければ今となってはただの壁面のオブジェ。今現在あんなの必要な人います?

*3:こんなジャンルが存在することをこの日初めて知った

*4:空港内の両替所は最もレートが悪いことが通説だが、降機する前に手早く検索した結果ハノイにおいては空港の両替所が結局最もレートが良いらしいという情報を入手。