カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

聴く読書の虫

幼い時分の通信簿に担任から「本の虫」と書かれたのも今は昔、社会人となってからはオンにオフに格段に忙しくなってしまったこともありすっかり読書習慣がなくなってしまった自分が昨年来また新たに嵌った読書が「聴く読書」のキャッチフレーズでおなじみのAudible。


数年前に無料お試しに申し込んだ際に付与された幾つかの購読コインを使い切ってからは特に気にすることもなく忘れていたのだが、昨年より月間1500円のサブスクに移行したので退会する前にもう少しだけ聞いてみようと改めて何冊か聞いてみたところ「聴く読書」の合理性がすっかり気に入ってしまい聴く読書習慣が日常となっている昨今。耳で聞く読書など頭に入るものかと訝しんでいたのだが自分の優位感覚は意外にも視覚型より聴覚型であったらしく、小さな活字を追うよりスムーズに内容が頭に入ってくると感じられるほど相性が良い*1。「とは言え本を耳で聴くなど邪道な」という偏見が無いではなかったが、ソクラテスが当時の最新メディアであった書籍を「言葉を文字に落として『読む』など邪道、あんなものに頼ると頭が馬鹿になる」とけちょんけちょんに否定していたことを思い起こせば新しいスタイルを無下に否定するのも愚かしく思え、逆にその言葉に従えば本は「読む」より「聴く」方がかの大哲人の理想により近い形であるとも言える。何しろ電車に乗っている間もスーパーを往復する道すがらも家を掃除している間も皿を洗っている間も着替えの最中でさえ、ありとあらゆる隙間時間を全て読書時間に充てられるのだから読書(というより聴書)が捗る捗る。月間1500円のサブスク料金など三日もあれば元が取れてしまうので極めて経済的でもあり、いい時代になったものだと感心することしきり。漆喰左官と違いこれは誰にでも薦められる。視覚型の特性が強い人に「聴書」は合わないかもしれないが、無料体験期間中にそれを見極めて有料に移る前に退会すれば一円も損はしないのだからやはり万人に安心して薦められる新習慣ではある。

*1:ベストの再生速度は1.7倍