カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

タイルと木の組み合わせの床

スパース・ナ・クラヴィーの床で思い出したが、職場近くにあるコレド室町の地階の床は40㎝角の天然石風タイルと無垢オークの組み合わせでなかなか面白い趣向。格子木のようなオークが和の風合いを出していて日本橋という場所柄にもよくマッチしている。

 

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面白くはあるがこの手のパターンはそれなりの反復を許す面積がなければ効果がないので個人宅の玄関には不向き、天然木であれば風雨に晒される場所にも使えないので庭やポーチにも向かず、やはりこういった公共施設屋内の床ならではの細工と言えるだろう。

 

おろしや国一週間(13)2018年12月17日 サンクトペテルブルクその2

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クリスマスイルミネーションで彩られた街並み

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スパース・ナ・クラヴィー教会の見どころは足元

サンクトペテルブルクはモスクワほど大きい街ではないので見どころは比較的コンパクトに纏まっている。市の中心部にあって一番手軽に訪れやすい見どころはスパース・ナ・クラヴィーСпас на Крови教会、正式名称はハリストス復活大聖堂というらしいが日本語では「血の上の救世主教会」という物騒な通称で知られている。なんでそんな通称がついたかと言えば1881年に皇帝アレクサンドル二世が暗殺された現場に建てられた教会なので。

(アレクサンドル二世は日本史の教科書に出てくるプチャーチンを日本に派遣して日露和親条約を結んだニコライ一世の子、ニコライ一世は女帝エカチェリーナ二世のバカ息子パーヴェル一世の子なのですなわちアレクサンドル二世はエカチェリーナの曾孫にあたり、またロシア最後の皇帝となったニコライ二世は孫にあたる。アレクサンドル二世を爆殺したナロードニキと呼ばれる反政府活動家グループは後にその孫ニコライと帝国をロシア革命で葬り去ることになるボリシェビキの始祖というべき存在であり…など、近代欧州史は複雑かつ多角的に事情が絡み合っている様が非常に面白い。日本史でも戦国時代の東北地方の大名は互いに親戚同士のようなものだが、欧州ではさらにスケールが大きく国単位で王室が親戚関係だからより面白い。急速に近代化が進んだ19世紀の欧州でも政治面では未だ中世の面影を強く残し、外交や戦争には単に国益だけでなく義理人情や感情が大きく影響しているそのアンバランスさも興味をそそる)

サンクトペテルブルクの見どころ三大教会を勝手に決めれば聖イサアク大聖堂とカザン大聖堂、そしてここスパース・ナ・クラヴィー。イサアクからカザンまでは徒歩20分、カザンからクラヴィー*1までは徒歩10分とかからないからこの街を訪れた観光客はまず全て足を運ぶのではないだろうか。

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ネフスキー大通りを下るとほどなくして右手にカザン大聖堂

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運河を渡って左折すると正面に見えるのがスパース・ナ・クラヴィー教会

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2018年12月は補修工事中なので2016年12月の画像をご鑑賞ください

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実際に市民の教会として活動しているカザン大聖堂、ビザンチン様式が古めかしいイサアク大聖堂と比べ最も華やかで美しい教会がここスパース・ナ・クラヴィー。入場するとまず少しの隙間もなく壁画と天井画で埋め尽くされた空間に圧倒されるが、この教会の最大の見どころは足元のモザイク床にある。計算機もなければグラインダーもなく、手書きの寸法図片手に手作業で石を切り出していた19世紀にこれだけ精密で美しく寸分のずれもない(目地で調整とかの類の誤魔化しも一切ない)直線と円弧が組み合わされた芸術的なモザイク床を作り上げた職人技とセンスには感嘆するばかり。同じことを現在の職人がやろうとしてもそう簡単にはできないのではないだろうか。1.5メートル×1メートルにも満たない我が家の玄関のタイル張りに四苦八苦するぽんこつDIY職人も、その霊感の一滴でも恩恵に預かれたら大変に助かるのだが。

 

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これは天井

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そして圧巻の床シリーズ

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vimeo.com

 

すごいね、職人。

 

*1:Кровиは血という意味だからクラヴィーという略し方は適切ではないかもしれない

おろしや国一週間(12)2018年12月16日 サンクトペテルブルクその1

シェレメーチエヴォでは余裕を持った乗り換えスケジュールを!

成田から10時間のフライトを経てモスクワのシェレメーチエヴォ空港に到着するのは現地時間17時35分、70分後発の国内線に乗り換えて2時間強でサンクトペテルブルクに到着するタイトなスケジュールを組んだがやはり無理があったという話。

まず現地到着時間からしてやや遅れ、降機した時点で残り時間は40分。羽田空港であったなら乗り換えには十分な時間だろうが、シェレメーチエヴォ空港の国内線ターミナルEまでは遠い遠いひたすら遠い、同じ空港名を名乗って欲しくないほど遠い。どれくらい遠いかと言えばターミナル内を歩くこと15分で専用モノレール発着駅に到着、乗ること10分で下車してからもゲートまでまた5分歩く。最短でも30分、構造も職員もお世辞にもカスタマーフレンドリーとは言えないシェレメーチエヴォ空港で、国際線から国内線に乗り継ぐのに初見でこの最短コースを脇目も降らずスタスタ辿れる人などまずいまい。

ということで人生初の飛行機乗り遅れという旅慣れテーラーにあるまじき大失態を演じ、3時間後の後続便チケットを買い直す羽目に。初めから乗り換え4時間のこの便にしておけば良かった。

市内までの移動はバスがおすすめ

大抵の国際空港からは市内までアクセスする直行列車が乗り入れているものだが、サンクトペテルブルクのプルコヴァ空港にはそのインフラはない。なのでвыход*1とExitが併記されている出口を出たら声を掛けてくる白タクの運ちゃんには目をくれず、真っ直ぐ正面に止まっている市の中心部行きバスに乗り込む。両替しなくてもバスには車掌が乗っていてクレカ決済OKなので、わざわざ空港内の両替所で余計な時間を使うことはない。50ルーブルだったか65ルーブル(1ルーブルは1.8円程度)だったか忘れたが、いずれにしても白タクなら5000円ほどは吹っ掛けられる(らしい)ことを思えば格安。30分ほどの道程で途中何か所か停車するが、とりあえず終点まで乗っていればOK。あとは最寄りの地下鉄駅に乗ってホテルまで移動。

 

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夜明けの冬宮と

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夜明けのネフスキープロスペクト(大通り)。夜明けといっても朝9時でまだこれくらい


 

*1:入口がвходで出口がвыход、英語併記がない施設も少なくないのでとりあえずBから始まる単語がついているドアがあったら入口か出口と思っておけばいい

おろしや国一週間(12)2018年12月16日 サンクトペテルブルクその1

以前の首都であり歴史的建造物が多いことからサンクトペテルブルク(セントピーターズバーグ)についてしばしば東京に対する京都のようにイメージしている方も多いと思うが、18世紀初めのスウェーデンとの大北方戦争のためにピョートル一世がネヴァ川河口に築いた(今も残る)要塞がこの街の起こりであるため決して京都のような古都ではなく、寧ろモスクワに比べればかなり新しい街といえるのだが、地理的にもヨーロッパの影響を強く受けた文化芸術の都であることには違いなく、北欧から簡単にアクセスできることもあって我々日本人にはモスクワよりとっつきやすい街ではある。 サンクトペテルブルクへは2016年はペトロザボーツクから特急列車で入り、その二年後にはモスクワから空路で入ったのだが…


(近況)年末の組織改編で大阪の本社業務部門に異動となり、大阪への片道切符を免れた代わりに社内で傍流に身を置くことと大阪と東京を行ったり来たりする生活が不可避となった。今年は年明けから平日の半分近くは大阪出張で東京では深夜まで仕事、家に帰ったら帰ったで居候が粗相していて休日は家事に忙殺されるという日々でブログを更新する暇もなかなか取れない。今日もこれからすぐ大阪に向かって発たなければならない…ということで続きはまた後日。

再び北で骨休め

前回の休暇のメモがサンクトペテルブルクの直前で途絶えてから(飽きっぽいんだこれが)、気が付けば丸二年。
二年ぶりの夏休みは諸々の事情によりまた同じところを訪れることとなったので、帰国してから2016年と2018年を行ったり来たりしながら備忘録の続きを書きつけていこうかなと。

前回の目玉はマリインスキー劇場、今回の目玉はミハイロフスキー劇場。
マリインスキーの面々は東の国に巡業に出ているので留守だしね。石井久美子にとっては凱旋公演か…

 

https://em-ar-kay.tumblr.com/post/181149616170/2016年12月15日のマリインスキー劇場iphone6
 
さてそろそろ出立だ。

穴場のインゲヤード・ローマン展

10月最後の日曜に訪れた*1国立近代美術館工芸館のインゲヤードローマン展。

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閉館一時間前には入るべし。理由は後述

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コレクションには磁器もある

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段ボールの天板がユニーク

彼女はプロダクトデザイナーなので展示品の殆どは売り物であり(我が家にも二つばかりある)、計算された照明と配列で整然と並べられた様は壮観ではあるものの、一点物としての希少価値がある訳ではない。

見所は15分もあれば見終わる展示物よりも寧ろ出口の前に設けられたスクリーンで再生される彼女のロングインタビュー。

 

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物づくりにおける彼女の美学と矜持、細部への拘り、日本と日本の職人との縁、またオリジナリティに価値を認めない昨今の消費者への失望と葛藤など、およそ30分に渡り余すことなく語られていて見応えがある。 

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テロップの代わりにモニター前のベンチに邦訳プリント。三つくらいしかないので頑張ってキープすべし

母国スウェーデンの工房も少しだけ登場している。彼女の作り出すガラスの器と同じように華美とは無縁で線が少なくシンプルだが清潔な美しさを持った、白く四角い小さな家。

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インタビュー映像はループ再生されているが是非初めから最後まで見通すべし。したがって閉館ギリギリに訪れるのはお勧めしない。
展示期間は2月までと長く設けられており、(訂正:12月9日までなので今週末で終了。フェルメールはさて置いてもこちらへ急げ!)前述の通りの事情で観客も少なくゆったり見れるので大混雑のフェルメール展にうんざりしたらここで骨休めするのもいいと思う。といって梯子するには少しばかり遠すぎるが

 

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さすがの重文

初めて訪れた工芸館は明治期の築と思しきレンガ造りの壮麗な建築物で、気になって調べてみると戦前は近衛師団司令部が置かれていた由緒正しき建物。さすがに旧軍のエリート集団にはそれなりの職場が用意されていたものだ。実に羨ましい。

*1:S氏と被ったが後追いではないというアピール。笑

アオダモ紅葉

冬を目前にして我が家のアオダモも紅葉および黄葉。
先代のナツハゼほど綺麗には色づかないものの、この色の移り変わりこそ落葉樹の醍醐味。

 

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夜になると下から照らされステンドグラスのように光って見える葉と青白い木肌の組み合わせが美しい。

 

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 黄葉と並行して加速度的に葉を落としつつあるアオダモ。最後の一枚が落葉すると同時に冬が始まるよ(Ⓒマッキー)