ヒースロー空港発レイキャビーク空港行きのノルウェー航空は早朝発、初日にしてホテル朝食を食べ損なって*1夜明け前の空港に向かう。
ロンドンからレイキャビークまではおよそ四時間、レイキャビーク空港到着はおよそ正午頃。
アイスランドには鉄道がないので、空港から市内へのアクセスは空港前から発車するバスかタクシーを使う。バスチケットは空港内のチケットセンターで購入できるが、車内アナウンスもバス停標識も一切ないので旅行者は何箇所かの市内の停留所がどこにあるか、どこで降りるべきか自分で把握しておく必要がある。
この日は市内のランドマークであるハットルグリムス教会至近のゲストハウスに投宿することにしたので、ハットルグリムス教会前の8番バス停(標識があるわけではない)で降りる。運転手はこちらが旅行者と見ると行先のホテルを聞いてきて最寄りのバス停で降ろしてくれるが、下調べなしで行って何とかなるような類の街ではないので注意が必要。
ハットルグリムス教会の目の前というロケーションとコスト優先で選んだこの日の宿はエリック・ザ・レッドハウスというゲストハウス。都心部とはいえ、シーズンオフ真っ只中のゲストハウス(要は民宿)で一泊1万円というところからこの国の物価が窺い知れるところ。
部屋で荷を解いて一息ついたら早速市内へ向かう。目抜き通りの坂を下ってコンパクトに纏まった都心を巡るが、アイスランドは元々デンマークだったこともあってか*2、首都レイキャビークの街並みも北欧デザインの本家たるコペンハーゲンを彷彿させるセンスの良さが伺える。
北米大陸に初めて到達した欧州人はコロンブスとされているが、実はその500年も前に到達していたのがアイスランドのバイキングであるレイフ・エリクソンであるという。ただ彼の到達は新大陸の開拓に何ら寄与しなかったこと、またアメリカにおいてイタリア系移民が盛んにロビー活動(コロンブスはイタリア人)を行ったことなどによってその記録は世界史の中で埋もれてしまっているのが気の毒。
都心から少し離れた家々は割と普通ぽいのだが、都心の街並みから一歩入ったところに並ぶ家はどれもおもちゃのように小さくカラフルで可愛らしい。雪景色に映えるこれらの家並みを眺めるだけでも十分に楽しい。
旅先ではスーパーに入って生活必需品の価格をチェックするのがルーチン。しかしアイスランドの物価も想像以上。1アイスランドクローネはおよそ0.8円だが、外食は勿論自炊も相当に高くつく。日本人の収入でここで暮らすのは大変だろう
相場としてカップコーヒーはおよそ400円、500㏄ペットボトルのジュースもおよそ300円から400円、水は300円。ハンバーガーのバリューセットはおよそ1000円。ディナーを外食するならごく普通のレストランでごく普通のメニューでも最低4000円といったところ。旅先では食にコストを掛けない主義(そもそもレストランがおひとり様想定ではない)の自分としては、この日の夕食はベトナム料理屋でぶっつぶつに切れた牛肉ビーフン麺で済ませる。貧乏舌の自分でも辟易するほどのお世辞にも美味しいとはいえない(東京で出店したら一か月で潰れるレベル)代物だが、たった1500円で腹を満たせるのでここは我慢我慢。
宿に帰りそろそろ寝ようかという頃、窓の外から猫の鳴き声が聞こえる。この宿で飼っている猫から中に入れろという催促だ。
窓を開けて入れてやると真っ直ぐドアに向かい、前に座ってドアを開けろアピール。
*1:旅先での移動は(夜行電車/バスを利用しないのであれば)午前発で午後着となるようにするのを原則としているが、島々を巡る今回の旅の移動手段は専ら飛行機なのでこの傾向はさらに顕著。何となれば、午前と午後に二便ずつ程度しかスケジュールがない中では朝に移動しようと思ったら思いきり早朝というか夜明け前の出発しか適当な便がなかったりする。なのでせっかく朝食付きの宿をとっても朝食前に出発ということも数知れず
*2:かつて北欧の覇権を握っていたデンマークはノルウェーとアイスランド、グリーンランドと広大な海外領土を有していたがナポレオン戦争で敗北して北欧の覇権と共にノルウェーをスウェーデンに譲り渡し、第二次大戦でナチスドイツに敗北し主権を失うと戦後処理の中でアイスランドにも独立を許して海外領土はグリーンランドのみが残った。欧州史に疎い日本人にとってはなぜ小国デンマークがどでかいグリーンランドを領有しているか分かりにくいが、歴史を紐解けばこのような経緯。さらにいえば今に至るまで海外領土には比較的冷淡な中央政府と独立志向の強いグリーンランド、そしてチャイナマネーでグリーンランド支配を進める中国という図式から先日のトランプ大統領によるグリーランド買収発言は突拍子もないことではないと分かる。地政学上グリーンランドは北米なのだ