カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

ヘイルメリー裏話

・雨男の家主のせいか、六月半ばの大雨の中を取材に見えられたのは副編集長とライター、カメラマンの三名様、それと解説のS氏の総勢四名。

・プロによるプロの仕事は憧憬を覚えるほど格好のいいものだが、今回のご一行も(これまでに取材に見えられた方々と同じく)さすがはプロという仕事ぶりを見せてくれた。

・具体的には、ライターさんは話のネタを探し当てて上手く引き出し、文字制限に収まる範囲できちんと勘所をとらえた記事として成立させる技術。

・カメラさんは副編集長のイメージを的確に理解し、それを表現する構図と露出と効果で画像を撮影する技術。

・副編さんは取材対象の気分が上がるように家のいいところを的確に見つけて褒めてくれる技術、紙面をイメージしながらカメラマンに適切な指示を出す技術。趣味人向け雑誌の副編集長を務めるだけあって多方面に渡って造詣が深く、これまでの我が家の来訪者の中では恐らく一番の目利き。S氏が意図した(けど誰も気づかない)この小さな家の造形的な見どころを一見で即座に把握したのは地味に凄いこと。

・これまでに我が家への訪問者の傾向(爬虫類に対しては女性より男性の方がより苦手とする)に漏れず、今回のご一行も床をうろちょろする居候はちやほやしてくれるもののアクリルケースの中で静かにしている居候に対してはほぼコメントなし。

・その静かな居候は取材の最中に排便したため、ケース清掃が済むまで取材は一時中断。ケースを洗っている間の居候はS氏に持っていてもらう。おお、初対面から10年目にして初のスキンシップ笑

・あの種類はとりわけ鋭くて長い牙を持っている*1ので、毒はなくとも噛まれたら割とただでは済まない(取材の翌週に10年ぶりくらいに思いきり噛まれて流血沙汰、噛まれた左腕は未だに歯形と内出血が消えない)ので無事でよかったねと。専門家はこれをして知らぬが仏と言う。

・プロが使い込んだプロの仕事道具というのは魅力的なものだが、今回のカメラマンさんの仕事道具であるカーボン三脚の使い込まれ方が実にセクシーであったので思わず撮影。

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これぞプロの仕事道具といった佇まい、金では買えないこの趣が実に格好いい。 

 

*1:樹上性なので主な獲物となる鳥を捕まえやすいよう発達したといわれている

二度目の玄関タイル張り(4)令和初日、令和初工事

明けて令和元年五月一日

24時間を経過しボンドが十分硬化したのを確かめて工事の続き。
まずはスペーサーを外すところから。

普通のスペーサーなら真上に引き抜けばいいのだが、今回使用したレベリングスペーサーは足がタイルの下に回り込んでいる。なので足はそのままにして直立している上部だけを取り除くことになる。

この取り除き作業が楽しい。こんな感じで

vimeo.com

 

達磨落としのようにスコンスコンと小気味良くスペーサーを取り除いたところで目地詰め…の前に目地スペースにはみ出たボンドを取り除く作業が待っている。ボンド施工ならではのこの地味な作業もまた綺麗に目地を詰めるためには欠かせない。NT大型カッターの刃が一本ボロボロになるまで片っ端からガリガリとほじりまくる。

目地スペースからボンドを綺麗に取り除き、ついでにタイル表面に付着したボンドをシンナーで落とした後で漸く目地詰めの用意。通常は目地詰めに養生は行わないのだが、横着な自分は拭き取りの手間を省くために今回は養生を行う。

 

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タイル貼りに比べれば目地詰めなどデザートのようなもの。
画像のぶれ加減からも緊張感の欠如は伝わってくる

 

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100均のプラ容器でひたすらこね回す

 

アルカリで指紋が荒れてしまうが、目地詰めには指の腹を使うのが一番。
目地を押し込んで表面をならし、養生テープを剥がして仕上げにサンポールを希釈した希塩酸でタイル表面を拭いて付着した目地モルタルを取り去る。

 

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出来上がり

かくして令和初日の工事はあっさりと終了。

これで完成…ではなくまだ仕上げが残っているのだが、それはまた後日。

 

二度目の玄関タイル張り(3)平成最終日、平成最終工事

仕切り直しはギリ平成に間に合った

タイルオンタイル施工ではやはりボンド貼りでなければ駄目。購入したばかりのセメント増粘剤を返品しに行ったホムセンにはタイル用ボンドは売っておらず、当日中の施工は断念。amazonmonotaroでは入手できるがさすがに大型連休なので休み明けの発送ばかりのところ、二日後に配送可の業者が一つだけ見つかり即座に注文。入っててよかったamazonプライム

平成最後の日となる4月30日の午前中に予定通りボンドが到着、改めて工事の仕切り直し。スタメンは以下の通り

 

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中央に陣取るセメダインタイルエースProの2㎏入りチューブ3本以外は二日前と同じ顔触れ。こんな可愛げのないボンドがホムセンや東急ハンズの棚に並んでいる筈もなく、こんなものを素人が簡単に入手できるとはつくづくいい時代になったものだ。

早速バケツにボンドをチューブから絞り出し、柄杓で玄関タイルの上に運んでは5㎜の櫛目鏝で均等に均していく。さすがに強力ボンドだけあって、釉薬の乗った既存タイルの上でも食いつきは全く問題ない。

 

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狭い玄関とはいえ全面にボンドを塗り終えてしまったら手が届かなくなってしまう。ボンドを半分ほど塗り広げたところでゴム手袋を脱ぎ捨て、新しいゴム手袋に付け替えると奥から順にタイルの貼り付けを開始。以降はボンドの高さがムラにならないよう注意しながら、塗っては貼りの繰り返し。
あちこちにボンドがうつってしまい後始末に大変苦労したの前回の教訓を踏まえ、今回は100個入りの徳用ゴム手袋を用意し、タイル一枚貼るごとに脱ぎ捨てては付け替えを繰り返しつつ、日が暮れるまでに何とか貼り終わり。 

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なんだこれ
 
今回の工事に投入した新兵器

今回の玄関タイル工事にあたっては前回には使用しなかった新しい道具を用意。

 

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レベリングスペーサーと呼ばれるこのスペーサー、タイル底面に足を差し込んでタイルと共に貼り込んだ後に赤いレベライザーを横から差し込んで専用のクリップでガチガチと絞め込むと、スペーサーの足で持ち上げられた二枚のタイルが同じ高さに揃ってくるという優れもの。
スペーサー、レベライザーともに100個セットでしか販売されていないので一回こっきりの使用となるクリップと合わせ決して安いものではないが、後悔先に立たず、満足のいく仕上がりを目指すならばこういうところにコストを惜しんではいけない。と自分に言い聞かせてポチった代物。

 

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タイルの色味の配置は無作為風の作為



 平成最後の日はこうして終わり。

 

令和初のウッドデッキメンテナンス

梅雨入り直前の六月初め、半期に一度の恒例ウッドデッキ塗油を施す。
塗った油の匂いも消えないうちに雨が降るのもこの時期のお約束

 

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なんかクサい

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なんかクサい

 

二度目の玄関タイル張り(2)セメントでは駄目だった

タイルカットはいつものところにお任せ

注文した玄関タイルが届く。前回と同じくレンタカーを借り、これもまた前回と同じく川口市㈱ハマストーンに持ち込む。個人の細かい仕事も快く引き受けてくれる職人はいそうで余りいない。素人にとって職人というのはなんだか無愛想でとっつきにくい人達という印象を持たれがちな中で、このような個人にも敷居の低い石材店は自分のようなDIY屋にとって貴重な存在。

「こんにちはお久しぶりです。これがそのタイルですか」
「またお世話になります。お送りした図面のようにお願いします」
「また自分で貼るんですか。やりますね(ニヤリ)」
「ええ家の猫のせいで」
「猫」
「猫」
「…図面見るとサイズが色々ですが、どこにどれを使いたいとか希望ありますか」
「えーと今回のは結構色むらがあるタイルなんで。白っぽかったりグレー味が強かったり茶色ぽかったり。出来れば白っぽい色味で揃えたいんですよ」
「んーと、あんまりお勧めしないですねそれは。こういうナチュラルな風合いのタイルは変に計算せずに自然にやった方がいいですよ。でないと却って不自然になるんで」

さすがプロのアドバイスは的を射ている。それでは完全お任せで、と言って預けて待つこと三週間、GWに突入する二週前に綺麗にカットされたタイルが到着。

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宅配便も台車で運ぶ重さ
平成最後のGWに平成最後のDIY開始

満を持してGW初日、いよいよ工事を開始。
今回のツールは

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左から目地鏝(結局使用せず)と貼り付け用のセメント、攪拌機と目地材、5mm櫛目鏝にゴムハンマー、上段は今回初使用のレベリングスペーサーとそのクリップ。

前回は貼り付けにボンドを用いたが、今回は正統派のセメントを用いた施工とする。セメントの食いつきを良くするには既存タイルの表面を斫った方がいいらしいのだが、狭いとはいえ玄関一面のタイルの表面をグラインダーで斫るのも相当に大変な作業だし、騒音や粉塵による汚れもかなりのものとなることが容易に予測され、また斫るにしても均等に水平に斫り下げることが出来なければその上に貼るタイルも凸凹になってしまう等、我が家で行うには色々難点が見つかったのでその過程は省略。ま、接着セメントというくらいだから何とかなるだろう。

 

早速セメントをバケツにあけると規定量の水を加え念入りに攪拌、
頃合いを見て鏝で既存タイルの上に塗り広げ

塗り広げ

塗り広げ。

塗り広、がらない。

どれだけ鏝で均そうとしてもタイルセメントは鏝に絡まってダマになるだけで下のタイルには少しも張り付かない。これはどういうことだ。

ああ、失敗した。ボンドならともかく、セメント程度の接着力では釉薬の乗ったタイルの表面には貼りつかないのだ。タイル表面を斫るのを怠ったのが原因なのは言うまでもないが、とはいえ斫るのも無理だよなあ。家の中粉塵で真っ白くなっちゃうよ

どうするか。とにかくセメントを玄関一面にぶちまけて、無理やりタイルを乗せて乾くのを待とうか。いやそんなことをしても乾いたらたちまち剥がれてしまうだけで、それこそ取り返しのつかないことになってしまう。

数分の逡巡の後、取りあえず所在なげにタイルの上に乗っている分のセメントを手早く回収しバケツに戻すと自転車で最寄りのホームセンターまで走る。セメント接着増強剤を二袋ほど購入。これを加えれば、あるいは何とかなるかもしれない。
しかし往復のロードバイクの爆走もむなしく、帰宅する頃には速乾性のセメントは早くもバケツの中で硬化が始まっていた。これで万事休す。

教訓:タイルオンタイルにセメントは無理

 

おろしや国一週間(17)2018年12月18日 サンクトペテルブルクその6

ペテルブルク発祥の地へ

18世紀の大北方戦争においてピョートル一世が宿敵カール十二世率いるスウェーデン軍への備えとしてネヴァ川河口に築いたペトロパヴロフスク要塞がサンクトペテルブルクの街の始まり。現在はロマノフ王朝の霊廟となっているペトロ・パウェル大聖堂が聳え立つ要塞跡へはゴリコフスカヤ駅から徒歩10分。

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青い二番線のゴリコフスカヤ駅

ルートはこんな感じ。道のどこにも案内板がないがひときわ目立つ大聖堂のお陰で迷う心配はない


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凍てつくネヴァ川にかかる橋を渡る

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ペトロ・パウェル大聖堂の霊廟

大聖堂には所せましと石棺が並べられているが壁にガイドが貼られているので分かりやすい。ビッグネームは祭壇前最前列に並ぶ

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エカテリーナ二世の棺

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最前列右端にトルソー付きのピョートル一世、隣は妻のエカテリーナ一世

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中央部に位置し、肖像画が飾られひときわ多くの花など手向けられているのはマリア・フョードロヴナの棺。デンマーク王室からアレクサンドル三世に嫁入りした彼女の美貌は際立っており、その息子である最後の皇帝ニコライ二世のハンサムは母譲りであることがよく分かる

 

ロマノフ朝最後の一家の棺は祭壇から離れた別室に

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最後のこの霊廟に加えられたその息子ニコライ二世たちの棺は幅1メートルほどしかなく、さらに中身はニコライのみならずその一家全員の遺骨が纏められている。ロシア革命の過程で虐殺された一家の遺骨は粉砕されたうえバラバラに炭鉱に埋められたため、ソ連民主化の過程にある1998年に掘り起こされ改めて国葬された時にもごく一部しか発見されなかったからだ。そしてニコライの子のうちアレクセイとマリアの遺骨はごく最近まで鑑定が行われており、未だこの場に葬られてすらいない。

最後の皇帝ニコライ二世は皇太子時代に訪れた日本で警備の警官に切りつけられ重傷を負い(大津事件)、そのせいか帰国後日本人を猿と呼んでひどく侮蔑するようになる。その侮日感情は日露戦争開戦の遠因になったと言われているほどで人格的にはあまり親しみを感じられない人物ではあるが、その一家の悲劇的な最期には同情を禁じ得ない。ソ連崩壊がなかったら彼らはここに改葬されることもなく、炭鉱の穴の底で未だ泥濘にまみれたままであっただろう。

 

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聖堂内部はいつものように豪華絢爛。いつものように、としか言いようのない豪華さ

 

vimeo.com

 

大昔要塞昔刑務所、今は陰気な博物館

大聖堂を出ると隣接する要塞跡へ。要塞としての役目を終えた後長く政治犯を投獄する刑務所として使用され現在は刑務所博物館となっているが、内部は薄暗く、廊下に立っている職員も陰気で怖いもの好きの人にはお勧め。

 

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陰気な廊下の突き当りには陰気な爺さんが陰気な顔で突っ立っている。怖

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壁の内部に厚くフェルトが張られていたのは防寒のためではなく、囚人同士の壁を叩くことによるコミュニケーションを阻止するためとのこと。


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レーニンの実兄であるアレクサンドル・イリイチもここに投獄されていた

閉館時間になって外に出ると既にとっぷりと日が暮れている。要塞跡に隣接する拷問博物館という看板のマネキンが悪趣味な施設を素通りし帰路を急ぐ。

 

 

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右手ペトロ・パウェル大聖堂、奥がペトロパヴロフスク要塞跡

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対岸のサンクトペテルブルクの街の灯 右

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対岸のサンクトペテルブルクの街の灯 中央

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対岸のサンクトペテルブルクの街の灯 左

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帰りも橋を渡る

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雪の公園をちんたら通り抜けてゴリコフスカヤ駅に到着










 

二度目の玄関タイル張り(1)割り付けと張り方を決める

玄関用に二度目に貼るタイルは前回と同じ伊Refin社の「Voyager」に決定。購入元はいつものサンワカンパニー

購入を決めた時点では品切れ、再入荷される2月後半までに割り付けを考える。
600mmX600mmの大判だった前回と違い300mm×600mmの中判タイルなのでバランスよくできるだけ均等なタイル割にするとして、目地はどうする。すなわち馬目地にするか、前回同様に芋目地にするか。

 

前に施工した玄関タイルもキッチン壁のタイルも芋目地。我が家のタイルは軒並み芋目地なのだが、今回はタイルの趣からして馬目地が合うのに決まっている。何でってそう直観したのだから仕方ない。

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ハマストーンにタイルカットを外注する際に送付した割付図


前回5mmとった目地幅は今回は2㎜とする。目地は太いほど素朴な風合いが増し、細いほどシャープな印象となるが、家づくりにおける腕前の進歩を試す意味もあって今回はそこそこシビアな調整が求められる細い目地を試みる。さらに目地そのものを打たない「目地なし」という貼り方もあるにはあるが、ほんの僅かな誤差も調整できない目地なしは難易度が高すぎるので採用せず。現場でタイルをカットして張るならサイズ調整は可能だが、これらタイルのカットは全て外注なので、ずれや狂いに気づいたところで後の祭りになるからだ。ほんの1㎜であろうとスペースが足りなければタイルは収まらない。
ということでオーソドクスに目地は打つ。ただし出来るだけ細目に。