カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

夢の3DプリンタのRC住宅に死角はあるか

前から話題になっていた3Dプリンタで作成する家がいよいよ本格的に市場に参入するというニュース。


プロトタイプの家、スフィアと名付けられた10㎡の卵型の建造物を家とする人はいないだろう。用途としてはテントとほぼ変わらない=住宅としては使用できないこのような色物にはあまり興味はないのだが、俄然興味をそそられるのは来夏から供給を開始するという49㎡の「住宅」。こちらは鉄筋が入ったしっかりとしたRC住宅として建造し、しかもコストは僅か500万円程度に抑えられるというから驚き。従来のRC住宅であれば建築コストはその6倍は下らないであろうことを考えると、国産車を買う程度の経済的負担でRC住宅を建てられることは正に驚異的であり、また既存のハウスメーカーにとっては脅威的であろう。下手をすればリフォームより安く上がるので、リフォーム業者のパイを食い荒らす存在にすらなり得る。建築コストを下げるために規格化する必要もないので、注文住宅を得意とする建築事務所にとっても他人事ではない。広さが丁度同じくらいのLWHも然り、RC住宅とLWHが天秤にかけられるという、これまではあり得なかった競合が発生する可能性もある。

住宅市場のゲームチェンジャーとなるかもしれない3DプリンタのRC住宅に課題はあるだろうか。まず10㎡で20t以上という一般のRC住宅に比較しても超重量級の家であれば建てる場所を選ぶであろう*1し、庇を含む外壁の仕上げはどうにでもなるとしても、射出したコンクリートを積み重ねていく作り方であれば平屋限定とならざるを得ないだろう。また機材の制約から大きな家を建てるのは難しいかもしれない。建てた後の問題としては、極厚の壁は頑丈過ぎてリフォームも取り壊しも困難を極めるだろう*2

・・このくらいか。勿論「木の家」を求める層に訴求することはないが、コスト面からRC造を諦めていた「小さな平屋をRC造で建てたい」という層にこれ以上刺さる家はないのではないだろうか。個人的にも現物を目にするのが楽しみな家ではある。

*1:軟弱地盤なら柱状改良程度では厳しいかもしれない

*2:頑丈なRC建築物の取り壊しは騒音や震動により近隣住宅に大迷惑をかけることが多いことから、住宅密集地ではRC造を作ってはいけないと主張する建築士もいる位なのだが、一般のRC住宅よりさらに極厚の壁を持つこの家を取り壊すのは相当に大変であろうことは想像に難くないし、間取り変更を伴うリフォームはほぼ不可能だろう