カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

第三期内壁工事(1)マテリアル

12年前にローラー漆喰を塗った時にはローラー漆喰と本物の漆喰の違いもよく分かっていなかった。
8年前に初めて漆喰を左官で塗った時には漆喰の種類と特徴についてもよく分かっていなかった。
今回は・・・

施工計画の傍ら漆喰について調べてみると、漆喰には日本の漆喰(和漆喰)の他に西洋漆喰と呼ばれる種類の漆喰があり、単に産地や名称だけでなく成分や特徴も日本の漆喰とは違うものであることが分かった。

・歴史 意外にも我が国においての歴史はそう長くなく、600年-700年程前の中世からようやく壁材として用いられるようになった。対し、西洋においては3000年前の古代から既に漆喰を壁に使用していたことが分かっている。
・用途 日本の建物は真壁で応力を受け持つので、その表面に塗られる漆喰は薄く綺麗に塗り広げる化粧材として、または防火・防水のために用いられる。西洋の漆喰は分厚く盛られ、強固に固まった漆喰それ自体が壁の一部として応力を受け持つ。
・成分 日本の漆喰は薄く綺麗に塗り広げやすくするため海藻のりを混ぜ込み、また藁すさなどのつなぎを多く含んでいる。対し、西洋の漆喰は強度を高めるため消石灰片などの骨材を多く含んでいる。

強固で割れにくくもあり、すさを含まないだけ和漆喰より白い、という説明も目にしたりして西洋漆喰に気持ちが傾く。それも昔ながらの純度の高い天然漆喰だ。国内メーカーの出す和漆喰には施工性の高さを謳ったものも多くあるが、それらの成分表をよく見れば壁への付着力や施工性を高めるためのアクリル樹脂などが含まれていたりする。だから本物でない、とは言わないが、どうせ塗るならケチの付け所のない本物の、完全天然素材の伝統的な漆喰に挑戦してみたいところ。
西洋漆喰といっても産地によりスペイン漆喰・フランス漆喰・スイス漆喰など色々だが、

スイス漆喰はアルプス原産の不純物の少ない石灰石を原料に、300年変わらない伝統製法で作り続けられています。現代の漆喰は1,400℃の高温で不純物の多い石灰石焼成するのに対して、スイス漆喰は950℃の低温で不純物の少ない石灰石を1週間かけて焼成します。そのため、細かく均一な粒子の生石灰ができ、強度の強い漆喰になります。そして、焼成した石灰石に水を混ぜ約6ヶ月間熟成させてスイス漆喰は出来上がります。糊や合成樹脂など化学物質も一切使用していない天然100%の素材です。そうしてできたスイス漆喰は、呼吸性が高く、柔軟性と硬さを持ち合わせた強固な壁を作ります。

という商品説明が素材オタク心に刺さったスイス漆喰「カルクウォール」を採用することに決定。*1

 

また8年前の第二期工事においては2階の北面に「鈍色」と名付けられた微妙なグレー色調のカラー漆喰を塗ったが、今回は1階トイレ・洗面スペースの南面の壁にカラー漆喰を塗ることとした。
一階は出来るだけ白く、がこれまでのコンセプトだったが、歳を取れば好みも変わる。入口から見て仕切り壁を隔てた突き当りに別色を配することで小さな家にも奥行きが感じられるようになるのではないか、またいつか見たダウニング街10番地のファサードのような「濃色の壁と白いフレーム」という映える組み合わせをこの壁で試すことができる*2ことに思い至った。

ダウニング街10番地首相官邸。黒いレンガに白い窓枠

 

しかし、今回採用するスイス漆喰にカラーバリエーションはない。正確には自分で顔料を調合しカラー漆喰にすることも出来るが、狙い通りの色調が出せるか甚だ心許ないので無難にメーカー既製品から選ぶこととした。

あれこれ調べたが基本的にカラー漆喰といえば黒、その他はパステル調の妙に明るい色*3ばかりでなかなかダウニング街10番地のイメージに近い暗い色が見つからない*4
灯台下暗しで、スイス漆喰の代理店が扱っているotonajoshi wallという商品名のフランス漆喰でようやく自分のイメージに近い濃色のカラバリを発見。この商品名にイラっとくるところがないと言ったら嘘になるが、漆喰そのものに罪はない。

 

かくして、第三期内壁工事に用いる素材を決定した。

*1:これがこの後のとてつもない苦労の始まりであったことはこの時点で知る由もない

*2:白い窓枠、白い爪とぎ枠、白い巾木

*3:淡いピンクとかパステルイエローとかやたらファンシーな色遣いに需要はあるのだろうか

*4:黒は強すぎて浮いてしまうので却下