カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

第三期内壁工事(8)第五次工事(10/2-10/3)第六次工事(10/8-10/9)



 

手元の記録によると日曜の未明までかかって第四次工事を終え、同日の昼から引き続き工事を行ったことになっている。あまり多次に渡ったのであまり良く憶えていないが、記録が正しければそういうことなのだろう。
この日から翌月曜日の未明にかけ二階寝室スペースの南側、ベッドをずらしてベッドに隠れた壁と一階西側の窓上の壁と洗面スペースの内壁の漆喰塗りを行い、既に一階行った一階の東側、階段の左手の壁を改めて上塗りしたのが第五次、翌週末の土曜日と日曜日を費やして東側の壁に再度の上塗りを行ったのが第六次の工事となる。

二階西側窓の上

DKと洗面を隔てる内壁のこちらは北側の壁

なぜ既に塗ってしまった壁の上から二回も追加して上塗りを行ったのかといえば、初回の壁塗りであまりに鏝跡が荒々しく残り気に入らないところが多々あったため。そしてその上塗りの出来にも満足が行かず出来る限りの平滑塗りを試みたため。
その気になれば何度でもやり直し(上塗り)が出来てしまうのが漆喰左官のメリット、というよりデメリットではないかと思う。何となれば、金と体力の続く限り何度でもトライ出来てしまうことで下手くそDIYの諦めどころが分からなくなってしまう可能性があるからだ。

一階から二階そしてロフトにまで連なる東側の大壁の漆喰塗りにおいては見事にその泥沼に嵌ってしまったパターンと言える。スイス漆喰は乾燥と共に発生する退け(収縮)が割とあるのか、塗った直後はそれなりに見えても乾燥するにしたがってどうしても粗が目につくようになってしまう(こんなところも素人向けの建材素材ではない)。およそ17時間をかけた第五次の工事でも納得いかず、追加の漆喰を取り寄せると次の週末に三度目の正直に挑む。

漆喰塗りのパターン仕上げは難しそうに見えて大して難しくなく、プレーンな面で平滑に仕上げるのが実は一番難しい(まして鏡面仕上げなど職人でしか成し得ない技巧の粋に他ならない)。不器用な素人がその平滑な仕上げに挑み、とにかく出来るだけ鏝跡を残さないよう出来るだけ丁寧に均しながら鏝を振るった左官工事は20時間を軽く超えてしまう。何しろ塗っても塗っても終わらない。塗っても塗っても終わらない。塗っても塗っても終わらない。平らな壁に向かっていながら迷宮に迷い込んだかのような錯覚に囚われる。

鏝を握りしめたまま意識が飛んだ回数など数えきれずの極限の疲労に陥りながら終えた三度目の壁塗りも、水分が抜けた仕上がりを見れば荒々しい鏝跡こそ目立たないもののゴルフボールのような凹凸が無数に続く、何ともいえずひょうげた漆喰壁となってしまう。狙い通りの平滑な仕上がりなどA3用紙一枚分程度しか成功していない。
上塗りに次ぐ上塗りで漆喰の厚みは5㎜にも達し、その結果触れるとひんやりした冷たさが伝わるとても厚い(そして恐らくはとても強い)漆喰壁となったこと、そして西洋漆喰ならではの屈託のない白さには満足しているものの最も目立つ大壁の仕上がりはやはり納得には程遠く、しかしながら腕と体力の限界を思い知ったのでこれにて打ち止めとして涙を飲んで引き下がらざるを得ない。これこそ嘆きの壁と呼ぶに相応しい。

へうげもの」に出てくる古田織部邸のようなひょうげた風情、しかし狙ったものではないだけに気恥ずかしさが募るものだが、しかし人間の順応力は大したもので、今となっては「ああ、凸凹しているねえ」と思う以外に何らの感慨も湧いてこない。この辺は禅智内供の鼻を彷彿させるものがあるね。

 

 

古田織部下屋敷「うぎゃあ」これはフィクション