カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

第三期内壁工事(3)塗り始め前に一仕事

今回用いたスイス漆喰「カルクウォール」は練り済みの状態で販売されている(サイズは25㎏と10㎏)。
一般の「練り済み」漆喰は粉と水を調合して撹拌機で混ぜる手順を済ませた状態で販売されており、購入者は撹拌機など用意する必要もなく容器の蓋を開ければすぐに鏝板に盛って塗りを開始できる利便性の高さが売り。7年前に北側の壁に採用したカラーワークスのHIP漆喰もそうだった。

しかし今回のスイス漆喰の一筋縄でいかなさ加減はまずその常識が通用しないところから現れていて、それが一見とっつきやすそうでも素人には(特に女性には)お勧めできない理由の一つでもある。

練り済みのスイス漆喰「カルクウォール」25㎏ドラムの蓋を開けると既に練られた漆喰とご対面となる筈だが、実際にはどうかといえば

 

長期保存したブルガリアヨーグルトがこんな感じになるね

この通り水と漆喰が完全に分離している。澄んだ水の下に固まった漆喰。

 


固くしまった漆喰土を攪拌するには柄杓程度では到底間に合わない。
当然、電動撹拌機の出動が必須となる。「練り済み漆喰」の利点とは。

 

飛沫が目に入ったらえらいことになるのでゴーグルは必須


*1で、とにもかくにもスクリューを突っ込んで入念に攪拌するのが最初の手順。

 

 

水の底の固い漆喰にスクリューを押し付け、周囲に飛び散らないように回転スピードを慎重にコントロールしながら攪拌を数分続けると大分柔らかくなってきたように見えるが、こう見えて実際のところは全然攪拌できていない。この段階で十分攪拌できたと勘違いして塗りを開始してしまうと取り返しのつかないことになるので注意が必要。
どういうことかといえば、撹拌機で混ぜることの出来る漆喰は全体のおよそ三分の二程度に過ぎない。残り三分の一の漆喰はドラムの底部や側面に固くこびりついていて撹拌機のスクリューは上滑りするだけ、ぐいと押し付けても撹拌機のトルクでは歯が立たない(スクリューが止まってしまう)。

初見殺しともいえるこの頑固な漆喰に対しどうすればいいかと言えば、やはり機械の手に負えないところは人力(腕力)しかない。

 

ph13(カビキラー・キッチンハイター同等)のアルカリ性なので素手はよした方がいい

肘まであるゴム手袋を装着した右手をおもむろに突っ込み、ドラムの内側に固く固くこびりついている漆喰に指を突き立てると力任せに引きはがす。相当な指の力を必要とする(握力30kg以下ではまず不可能)芸当で、「特に女性にはお勧めできない」としたのはこのため。

 

ほぼ粘土状態の漆喰を渾身の力で引きはがし持ち上げて

握りつぶす。いい握力トレーニングになる

 

引きはがした一握の漆喰は水面まで持ち上げるとぐしゃっと握りつぶし、再び次の一握へ。
これを無数に繰り返して底部や側面に固くこびりついた漆喰をあらかた引きはがしてしまったことを確認したら、

 

やっとクリーミーな漆喰に

なってきた。

再び撹拌機で攪拌。
数分かけて十分に練りあがったところでようやくスタンバイOK状態となる。
蓋を開けてからここまでおよそ30分。作業を始める前に既に軽く疲れるというね

 

こうして苦労して使える状態に持っていった漆喰も、また15分も経てば早くも分離を始め、漆喰土は底に沈殿して固着し始める*2ので堪らない。
この使いづらさは尋常でない。これなら初めから普通に粉で売ってくれた方が遥かに手間が省けるというものだが。西洋天然漆喰とはかくも気難しいものか。

 

 

*1:電動撹拌機はメーカー品を定価で購入するなら3万円前後、自分はオクで格安の中古品を購入し、その後に中華製無名メーカー品の新品を再度購入したが合計1万2千円程度。
この時点で「練り済み漆喰」としてのアドバンテージはゼロ

*2:長期在庫だから分離してしまっているわけではないということ