北の大三角形の旅(3)2020年3月2日 Geysir-Snæfellsnes
猫のRaggiを見送ってからベッドで宿においてあった観光パンフを広げ、冬季でも種々設定があるレイキャビーク発の半日観光ツアーを検討する。温泉ツアーや洞窟ツアーも捨てがたいが少々予算オーバーなので、よりお手軽なゲイシールとスナイフェルス半島を巡る見学ツアーを選択する。前日の申し込みでも余裕で間に合ってしまうのもオフシーズンのいいところ
ゲイシールの間欠泉で一番大きいのは高さ60mにもなりグレートゲイシールと呼ばれているらしいが、一日三回くらいしか噴かない(しかも当然スケジュールは決まっていない)ので観光客はその周囲にある数分おきに噴き上げる小さな間欠泉に集まる。会えるか会えないか分からない大スターより会いに行ける身近なアイドルに客は集まるよね
バスの出発時間が迫る中、そろそろ噴きそうだなと当たりを付けてスマホ構えていたところで見事な噴出をキャッチ
次はレイキャビークから120kmほど離れたスナイフェル半島へ。入り組んだフィヨルドに注ぐ滝が見どころ
見渡す限り森がない荒涼とした雪景色をレイキャビークまで戻る。木がないのは寒冷な気候のせいかと思ったが、昔は国土のほとんどは森林に覆われていたらしい。しかし入植者が伐採しつくしてしまって何もなくなったと。うーんバカ
北の大三角形の旅(2)2020年3月1日 Reykjavík
ヒースロー空港発レイキャビーク空港行きのノルウェー航空は早朝発、初日にしてホテル朝食を食べ損なって*1夜明け前の空港に向かう。
ロンドンからレイキャビークまではおよそ四時間、レイキャビーク空港到着はおよそ正午頃。
アイスランドには鉄道がないので、空港から市内へのアクセスは空港前から発車するバスかタクシーを使う。バスチケットは空港内のチケットセンターで購入できるが、車内アナウンスもバス停標識も一切ないので旅行者は何箇所かの市内の停留所がどこにあるか、どこで降りるべきか自分で把握しておく必要がある。
この日は市内のランドマークであるハットルグリムス教会至近のゲストハウスに投宿することにしたので、ハットルグリムス教会前の8番バス停(標識があるわけではない)で降りる。運転手はこちらが旅行者と見ると行先のホテルを聞いてきて最寄りのバス停で降ろしてくれるが、下調べなしで行って何とかなるような類の街ではないので注意が必要。
ハットルグリムス教会の目の前というロケーションとコスト優先で選んだこの日の宿はエリック・ザ・レッドハウスというゲストハウス。都心部とはいえ、シーズンオフ真っ只中のゲストハウス(要は民宿)で一泊1万円というところからこの国の物価が窺い知れるところ。
部屋で荷を解いて一息ついたら早速市内へ向かう。目抜き通りの坂を下ってコンパクトに纏まった都心を巡るが、アイスランドは元々デンマークだったこともあってか*2、首都レイキャビークの街並みも北欧デザインの本家たるコペンハーゲンを彷彿させるセンスの良さが伺える。
北米大陸に初めて到達した欧州人はコロンブスとされているが、実はその500年も前に到達していたのがアイスランドのバイキングであるレイフ・エリクソンであるという。ただ彼の到達は新大陸の開拓に何ら寄与しなかったこと、またアメリカにおいてイタリア系移民が盛んにロビー活動(コロンブスはイタリア人)を行ったことなどによってその記録は世界史の中で埋もれてしまっているのが気の毒。
都心から少し離れた家々は割と普通ぽいのだが、都心の街並みから一歩入ったところに並ぶ家はどれもおもちゃのように小さくカラフルで可愛らしい。雪景色に映えるこれらの家並みを眺めるだけでも十分に楽しい。
旅先ではスーパーに入って生活必需品の価格をチェックするのがルーチン。しかしアイスランドの物価も想像以上。1アイスランドクローネはおよそ0.8円だが、外食は勿論自炊も相当に高くつく。日本人の収入でここで暮らすのは大変だろう
相場としてカップコーヒーはおよそ400円、500㏄ペットボトルのジュースもおよそ300円から400円、水は300円。ハンバーガーのバリューセットはおよそ1000円。ディナーを外食するならごく普通のレストランでごく普通のメニューでも最低4000円といったところ。旅先では食にコストを掛けない主義(そもそもレストランがおひとり様想定ではない)の自分としては、この日の夕食はベトナム料理屋でぶっつぶつに切れた牛肉ビーフン麺で済ませる。貧乏舌の自分でも辟易するほどのお世辞にも美味しいとはいえない(東京で出店したら一か月で潰れるレベル)代物だが、たった1500円で腹を満たせるのでここは我慢我慢。
宿に帰りそろそろ寝ようかという頃、窓の外から猫の鳴き声が聞こえる。この宿で飼っている猫から中に入れろという催促だ。
窓を開けて入れてやると真っ直ぐドアに向かい、前に座ってドアを開けろアピール。
*1:旅先での移動は(夜行電車/バスを利用しないのであれば)午前発で午後着となるようにするのを原則としているが、島々を巡る今回の旅の移動手段は専ら飛行機なのでこの傾向はさらに顕著。何となれば、午前と午後に二便ずつ程度しかスケジュールがない中では朝に移動しようと思ったら思いきり早朝というか夜明け前の出発しか適当な便がなかったりする。なのでせっかく朝食付きの宿をとっても朝食前に出発ということも数知れず
*2:かつて北欧の覇権を握っていたデンマークはノルウェーとアイスランド、グリーンランドと広大な海外領土を有していたがナポレオン戦争で敗北して北欧の覇権と共にノルウェーをスウェーデンに譲り渡し、第二次大戦でナチスドイツに敗北し主権を失うと戦後処理の中でアイスランドにも独立を許して海外領土はグリーンランドのみが残った。欧州史に疎い日本人にとってはなぜ小国デンマークがどでかいグリーンランドを領有しているか分かりにくいが、歴史を紐解けばこのような経緯。さらにいえば今に至るまで海外領土には比較的冷淡な中央政府と独立志向の強いグリーンランド、そしてチャイナマネーでグリーンランド支配を進める中国という図式から先日のトランプ大統領によるグリーランド買収発言は突拍子もないことではないと分かる。地政学上グリーンランドは北米なのだ
焙煎事始め
コーヒー豆の焙煎機はだいぶ前にプロの方からこれがいいよとご紹介いただいた製品があったものの、業務用の本格的なものでサイズもお値段もなかなかのものなのでなかなか踏ん切りがつかず購入に至らずにいたところ、もう少しお値段もサイズもお手軽な焙煎機の製品化クラウドファンディング*1を目にしたので先行割引価格にて購入。
ファンでチャフを飛ばしながら高速回転しながら加熱すること20分で綺麗に煎り上がり。騒音はともかく、豆を煎るにおいが家中にこもって半日は抜けないので焙煎は玄関ポーチで。
スイッチを入れたら20分後の焙煎完了まで放置、チャフも綺麗に飛ばされるので確かにこれは使いやすい。
浅煎りモードがない(中煎りか深煎りのみ)ので酸味の強いコーヒーがお好みの方には向かないが、それ以外の忙しい人にはお勧め。深煎りすれば地獄のように苦いコーヒーが楽しめる。個人的には中煎りかな
*1:もともとは資金力のない個人や新興メーカーが製品化資金調達のために利用するためのクラウドファンディングだが、最近は資金に問題のない既存メーカーが新商品のマーケティングを兼ねて公募するケースが増えている。購入申し込みが集まれば初期ロット分は確実に捌くことが出来るし、反響が想定した数に届かなければ「売れない製品」と判断して生産を取りやめれば赤字を最小限に抑えることが出来るのでなかなか賢い手法だと思う
北の大三角形の旅(1)2020年2月29日 London
「北の大三角」とかいって何でまずロンドンよ。
といえば、単純にレイキャビクへの直行便は日本から出ていないので必ずどこかで乗り継ぎが必要ということと、かつ当日内の到着便は自分が払える範囲の航空券では存在しなかったのでやむを得ずまずロンドンで一泊という次第。
初っ端からアクセスの悪さ全開の旅程だが、ただの移動に100万円も費やすわけにはいかないのでコストと利便性のバランスが重要。今回のフライトスケジュールとコストは「自分ツアコンできんじゃね?」という位なかなかのものだと自画自賛。お年寄りにはきついかもね
なお今回の旅はキャッシュレス化の恩恵にあずかり、エアチケットは一社を除き全てeチケット。席も選べるしカウンター行かなくていいしでいいことずくめ。
まずは10時間のフライトでおなじみのモスクワはシェレメチェボ空港まで。
貧乏旅慣れテーラー御用達のシェレメチェボ空港だが、アエロフロートもシェレメチェエボ空港もこの25年で別人のように様変わりしたのが感慨深い。初めてシェレメチェボに降りたのは冷戦終結の余韻が未だ漂う1994年だったか、この頃のシェレメチェボはとにかく薄暗くておどろおどろしくておそロシヤ全開だったものだ。
アエロフロートのツポレフも古くて椅子がガタガタしてて変な位置にエンジンついてて…というのも今は昔、今日のアエロフロートは機体もボーイングかエアバスでサービスも普通に欧州各国のキャリアと変わりなく、シェレメチェボ空港も明るく清潔で快適なごく普通の空港である。
自分としては成田に次ぐ利用回数のシェレメチェボ空港に降り立つと、ロンドン行き便発までの6時間を空港内で過ごす。あちこちうろついていると、ロビーの一角に変なものが出来ているのを発見。
なんだこのおもちゃは。
近寄ってみると、どうやら時間貸しのカプセルホテルらしい
80年代のSF映画のセットのようなだっせえこのカプセルホテル、こんな騒々しいロビーの中で1時間750円払ってここで休みたい人がいるのかなあ。ベンチで休めばいいじゃん。まあ死ぬほど疲れていてとにかく横になりたい人なら需要あるかも
初めてのロンドンだが到着は夜遅く翌朝も早朝の出発なので、ホテル近辺をぶらぶら散歩してマックで夜食を食べた位で早々に就寝。特に感慨もなく、ただホテルの受付でHeathrawをヒートゥローと発音するのを聞いてああ英国だなと思ったくらい。
驚いたのはキャッシュレス経済の進化で、2年ほど前からロンドンバスは完全キャッシュレスで現金NGとのこと。また立ち寄ったマックも同様。この後訪れる各国でも完全キャッシュレスのファストフード店は実に多く、ガラパゴス日本をここでも痛感。なんでファーストフード事情に詳しくなってんだよという理由は後述するが、一言でいえば日本人がますます貧乏になったってこと。金持ち日本なんて遠い過去のまんが日本昔話よ
旅におすすめPEAK DESIGNアッセンブリー
旅と言えばカメラという人にお勧めしたいのが、5年前からカメラ回りで愛用しているPEAK DESIGNの製品。
このメーカーのカメラ回り製品のラインナップを見るとワンタッチで外せるカメラストラップにメッセンジャーバッグスタイルのカメラバッグ、までは優秀だが他に類似製品がないでもない。
このユニットの真骨頂は組み合わせで発揮される。特に頑丈なクリップをバッグに組み合わせてバッグ外部にカメラを下げて使える機能は、行く先々で戦場カメラマンのごとくシャッターを押す撮影好きな人には便利なことこの上ない。
通常の旅先での撮影スタイルは常にカメラをストラップで首から下げておくか、撮影の都度バッグからごそごそとカメラを取り出してはしまうことを繰り返すのが常、前者はブラブラしてあちこちにぶつかるカメラが邪魔くさく誰がどう見ても一目で観光客(と書いてカモと読む)とわかる野暮ったさ、後者はとにかく面倒でその内撮影自体が面倒になってしまうのがそれぞれ難点。
ところがこのクリップをバッグに取り付ければ(このページでキーテザーと説明されている箇所に挟む)、撮りたくなったらワンタッチでクリップからカメラを外し、撮り終わったら右手を後ろに回してクリップに差し込むだけで収納終わり。普段はストラップを外してバッグに直接ぶら下げて持ち運び、カメラだけで持ち歩きたいときはワンタッチのストラップを取り付けて持ち出すという機動力抜群なスタイルでカメラを運用することが出来るのだ。
むき出しのカメラをバッグからぶら下げるのは不用心にも思えるが、ぶら下げたカメラは背面に回るので正面からは見えず、クリップもクリップで挟み込むバッグのキーテザーも相当に頑丈なので、ひったくりはおろかナイフで切ろうにも(少なくともエスカレーターや電車でコソ泥に与えられた数分程度では)まず無理。よほど治安が悪いところでもなければセキュリティ面でも心配はないだろう。
この優れモノは我が国でももう少し普及してもよさそうなものだが、意外に自分以外のユーザーをついぞ見かけたことがないのでここいらで一つご紹介の巻。
北の大三角形の旅(序)青の都から行先変更、ロックダウン前夜の欧州へ
突然の日本人お断りのお知らせ
3月初め頃に取得する予定であった年に一度の連続休暇で当初予定していたのは中央アジアへの旅。キルギスから入り、タジキスタン・ウズベキスタンと西へ向かい、青の都サマルカンドあたりまで周遊する予定を立ててキルギスまでの航空券まで取ったところで、出発予定の三日前に飛び込んできたのがキルギスの日本人に対する(事実上の*1)入国禁止というニュース。
ロックダウン直前の欧州へ行先振り替え
ギャース!購入した航空券は格安なのでキャンセルしても返金はほぼない(購入時に返金保証の保険を付けておけばよかった)。ン万円の損を泣き寝入りして今年の休みは家で寝連休とするか損を承知で別の行先を決めるかを突然迫られることになって急遽組み立てた北への旅。
シリウス・ベテルギウス・プロキオンを冬の大三角形と呼ぶのになぞらえ、アイスランド・スヴァールバル諸島・フェロー諸島と極北の島を巡ったこの旅を北の大三角形の旅と名付ける。終業後のオフィスでああでもないこうでもないとコスト優先で組み立てたフライトスケジュールは10日間の旅程で実に搭乗が11回と殆どパズルのようなもの。
短期間にこれだけフライトが集中するとさすがに怪しまれてパスポートコントロールで妙に根掘り葉掘り聞かれたり、セキュリティでは漏れなくテロリストチェックを受けるようになったりするが、結果からすると今回の行先も大当たり。いずれの国も街も今回のような駆け足でなく一週間ぐらい腰を据えて滞在したいところばかりで、いつか再訪問する時の為にここに書きつけることとする。
後から振り返ると旅の日程は欧州各国が立てて続けにロックダウンする直前期にあたり、あと十日も後ろにずれ込んでいたら自分も帰路に発つ前にロックダウンに巻き込まれていた筈。普段であれば海外のどこに行っても目に入る筈の中国人、日本人、韓国人がどこに行ってもまるで目に入らないという珍しさも含め、ひときわ印象深い旅ではあった。
*1:2月末時点で日本人は2週間の隔離で経過観察、異常がなければ入国を許されるという措置。今にして思えばこれでもまだ緩かった
アベノマスク
全世帯の4%しか配布されていないと報道されていた先週のうちに早々に我が家の郵便受けに配達されていた噂のアベノマスク。皆の衆すまんの。と思いつつ手に取ると
これは…
お洒落か。この小ささがシャレオツなのか。昔ながらの布マスクとしてはとりわけ小さいという程でもないが、今どきのサイズからするとこれは…うーむ。
こんなの二つに440億円だか使うくらいならバタバタと倒れている飲食店や美容室の補償にでも当てた方が良かったのではないかと。
何だか存在意義の分からないこのガーゼ五層マスク、使いようがないのでお出汁を濾すのにでも使おうかと思う。知らんけど
どうせならこっちのアベノマスクを配布した方が洒落が効いてて良かった。支持率ガタ落ちか爆上げかのハイリスクハイリターン路線だが、今の日本人にこれを洒落として受け入れる素地があるかが問題ではある。多分ない