カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

Hit-and-Runnerの肖像

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カーシェルターのシートを張り替えてからわずか三週間後の雨が降りしきる梅雨の朝、突然「屋根から雪が落ちたような」異様な物音が表でしたのでおっとり刀で見に行くと、誰もいないがどこか様子がおかしい。よく見れば、何とシェルターがひしゃげている。

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フレームの前半分が全体的に歪み

 

一体何が起こったのかと狐につままれたような気分で部屋に戻り、防犯カメラ映像を確認してみると、ああなんということでしょう

 

vimeo.com

 

雨でブレーキが利かないのに猛スピードで坂の上から下ってきてコントロールを失ってシェルターに激突、シェルターとお隣の窓柵をぶち壊してそのまま立ち去った不届き者の映像がくっきりと。

自動車ではないのでナンバープレートも映っていないし、これは捕まえることは無理だなあと呆れつつも保険金請求のため一応警察に通報。やって来た警察官も映像を見て呆れるやら、これだけの勢いで激突してよく怪我もなく即座に逃走できるものだと感心するやら。

もとより期待していなかったが案の定当て逃げ犯の身元は割れることもなく、シェルターの損傷は見た目より激しくて一部フレーム要交換の他、張りなおしたばかりの真新しいシートも破損してしまったので要全交換。ガレージは家建物の範疇に入るということで幸い火災保険の保証対象となり、したがって経済的に大したダメージは生じない見込みではあるが、勿論気分は大変宜しくない。
とはいえ人相すら分からないのでは捕まえることなど望むべくもなく、せめてシートを張り替えた暁には一番目立つ部分にこの不逞の輩のキャプチャー画像を80㎝×240㎝の大サイズでプリントしてポップな感じに昇華出来ないものかと検討中。

 

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これをターポリンシートに転写できる業務用プリンタがあれば是非借りたい。マジで

 

11年目のリニューアル(1)カーシェルター更新

2010年の我が家の完成・入居から初めに行った追加工事がカーシェルターの設置。

3月最終週に入居し、まだキッチンタイルも貼られていない4月初めにははや施工している。

houseforone.seesaa.net

 

こうやって振り返ると10年という歳月の積み重ねは中々重い。考えてみれば10年あれば芋虫同然の赤ん坊もそろそろ中学受験を考える年ごろの半大人に成長するし、愛くるしい仔犬も寝てばかりいる目の濁った老犬になってしまうし、年7%で運用すれば元本は二倍に膨らむし、、ハムスターであれば何と20世代も係累を重ねることになる。親亀子亀孫亀どころの話ではない。大して変わってはいないと思うのは自分の感覚が麻痺しているだけで、実際にはこの家にもその主にも十年の月日なりの変化なり劣化なり熟成なりが確実に生じている筈だ。

ということで10年の月日を如実に示す劣化したカーシェルターのシート交換を10年ぶりに行ったという話。

施工業者は多忙を極めているため、依頼した三カ月経った7月に漸く施工実施。
一人社長の個人事業主でやっているので多忙なのもむべなるかな、この形態のシェルターとしてはほぼ競合不在状態なのでもう少し従業員を増やして工期を短縮すれば収益倍増も見込めると思うのだが、社長曰く薄利なのでとてもそんな余裕はないとのこと。勿体ない

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10年ぶりにシートを剥がされむき出しになったフレーム

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コンクリート面の汚れが10年の月日を物語る

フレームは全然劣化していないのでシート交換で十分と思っていたが、シートをフレームに繋ぎ留めているロープが接触する部分の腐食を指摘される。見ればなるほど、水気が抜けないロープが触れているせいでフレームの柱部分に真っ赤な錆びが広がっている。このまま腐食が進行すればフレームが折れて倒れてしまう事態も考えられるので、やはり工事に踏み切って良かった。

 

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幸い表面のみに留まっている錆を擦り落とし、

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腐食防止の塗装を上塗りして補修完了

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張り替え完了。やはり真新しいシートは気持ちがいいね

費用13万円也を支払って新品シートで気分も一新、これからまた10年は車もがっちり守られて安泰。車をあと10年維持できるかの方が問題だが


 

北の大三角形の旅(6)2020年3月3日 Oslo

オスロ中央駅の裏手のオペラハウスから駅を挟んで反対側、駅前から東側に真っ直ぐ伸びる一本道を進むと王宮。東京駅丸の内口からまっすぐ進むと皇居という位置関係とよく似ていて非常に分かりやすい。

通過する駅内はエキナカが非常に充実していてとても楽しい。

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大空間の中にテナントが並ぶ

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英国資本の回転ずしチェーン、その名もヨー!スシ

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書店チェーンのARKをのぞくと

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欧州のハルキ人気は健在

 

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駅を抜けて反対側に

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旧駅庁舎と新駅庁舎が並ぶ

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東へ延びる目抜き通りをまっすぐ進む

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右手に見える教会を抜けなお真っ直ぐ進む

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ハンバーガーチェーンMAXを左手になお進む。バリューセットでも1000円超え

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右手のハードロックカフェオスロは日本の庶民にはハードルが高すぎる

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なぜなら前菜とハンバーガーとデザートで軽く一万円を超えてしまうから

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やがて上り坂になり

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丘の上には王宮が

中央駅からおよそ2㎞ほど進んだ丘の上にある王宮は驚くほど質素。現在も存続するノルウェー王家が住まうノルウェー王宮は公民館と言われたら納得してしまいそうなほど飾り気がなく、豪華絢爛たるサンクトペテルブルクの冬宮とは同じ宮殿でもこうも違うかとは思うほど対照的。王宮は質素でもノルウェー王家は今も健在で、贅を尽くした宮殿の主たるロマノフ皇家はとうに滅びてしまっているのも皮肉なもの。

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飾り気のないラインは北欧インテリアにも通じるかも

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警備も質素、入口の両脇に見張り兵が一名ずつ立っているだけ

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見どころは質素な王宮を取り囲む庭園。とっくに閉まっていて残念

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王宮前広場から来た道を振り返る。これは2007年

オスロストックホルムコペンハーゲンヘルシンキ、北欧四か国の首都は甲乙つけがたく魅力的で、いずれもモスクワのように手に負えないほど広くなく、ほどよく小ぢんまりとしているところも好ましい。可能であれば居候を連れて一カ月ずつ住んでみたいものだ…などと思いを巡らしながら来た道を戻るが、すっかり日が沈んだオスロはいよいよ気温が下がり体が芯から冷えてきた。

暑い日には熱い飲み物を飲めば涼しくなるという。であれば極寒の中では冷たいものを食べれば体が暖かくなるのではないか。という仮説を立証するために通り沿いのアイスクリーム屋に入ってみる。ハードロックカフェではあまりの高さに涙を飲んだ庶民もここなら安心して入れるしね

 

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ソフトクリームは500円ちょっと。安い

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寒いときには冷たいものを!

 

キンキンに冷えたオスロの街でキンキンに冷えたソフトクリームに齧り付くと…
うん、仮説は取り下げよう

 

 

 

北の大三角形の旅(5)2020年3月3日 Oslo

13年ぶりに踏んだオスロの地。

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2007年のオスロ。寒いので街中に普通にスケートリンクが出来る

明日も朝早いので今回はプチ観光、前回の訪問から新たに出来たランドマーク、オスロ中央駅の裏手に出来たオペラハウスを見学。

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駅の裏手はすぐ海

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おー見えてきた

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ちなみにこれが自転車先進国の道路区分

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氷山をイメージしたという建物

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右を向くと客船

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vimeo.com

 

ノルウェー国立オペラ・バレエ団の本拠でもあるこのオペラハウス、こんなオサレな建物が本拠とは羨ましい。
地面から生えたような特徴的な斜め屋根はそのまま登ることが出来る。遠目には(動画では)エスカレーターで移動しているように見えたが、近寄ってみると普通に徒歩で上がる仕様。それはそうか

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タイル張りの斜面の端に階段

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そこそこ急勾配

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振り返るとこんな感じ

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登り切ったらそのまま陸屋根につながる

感心したのは柵の類が全く設けられていないところで、自己責任でどうぞとの注意書きが表示されているだけ。これが日本であれば事故が起きたら責任を問われるのを恐れて不格好な柵を設けて端正な外観を台無しにしてしまうか、普通に立ち入り禁止としてしまうであろうところ。大人だなあと感心

 

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見晴らし・左

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見晴らし・中

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見晴らし・右

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無理やり270度のパノラマ

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沖合に見えた帆船をよく見ればガラスのオブジェ

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遠目にはただのシルバーの外壁

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近寄れば一面にモールス信号が刻まれている

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こちらは街側

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これもカッコいいビル

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オペラハウスのロビー。特に催し物はないがフリーWi-Fiが通じているので助かる

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トイレもおしゃれでぬかりない

一休みしたら王宮でも見に行くかー




















 

本屋が消えた町

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コロナ禍の外出自粛でとどめを刺されたのか、住む町で唯一あった本屋がひっそりと店じまいしドラッグストアに姿を変える。もう少し遠くの駅前に昔からあった本屋も気が付けば携帯ショップになってしまい、気が付けば自宅から徒歩圏内にある本屋は神楽坂のかもめブックスただ一つとなってしまった。ただここは今の職場からは仕事帰りにぶらりと寄るロケーションではないんだよなあ

casaegoista.hatenablog.jp

 

品揃えや利便性において実店舗はamazonに到底敵わない。しかし迷わず目的の本に辿り着ける代わりに、amazonには出会いがない。お目当ての本を探して徘徊するうちに目についた意外な本を手に取ってパラパラ捲り、当初の目的ではないが気に入って購入に至る、また当初目指していたものよりもっと自分の好みに合う書籍を見つけるといった思わぬ僥倖、幸せな無駄時間。お目当ての本に最短距離で辿り着くamazonにはそれが存在しない。子供期の自分の情緒形成には本屋での徘徊が欠かせない一役であったことを思うにつけ、人間はこうして変質していくのかと思わずにいられない。

 

北の大三角形の旅(4)2020年3月3日 Oslo

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次の訪問地、ノルウェースヴァールバル諸島の「最北の町*1」ロングイエールビーンへの直行便はレイキャビークから出ていないので、一旦ノルウェーの首都オスロまで出てから国内線に乗り換えて行かなくてはならない。乗り合わせも悪いため、ロンドンに続きここオスロでも繋ぎの一泊。これまで訪れた国では二番目に数多くの町を訪れているノルウェーだが、今回の入国は実に13年ぶり。久しぶりのオスロは変わっているのかいないのか。

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この日も朝食を摂りそこなって出発、夜明け前に空港着

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真冬の空港泊の猛者もいる

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セルフチェックインカウンター

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アイスランドの美男美女はこういう感じ?

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7時50分発で11時25分着、およそ3時間半のフライト

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アイスランド空港便で無事到着

 

木材を積極的に取り入れたオスロ空港は程よいサイズと相まって個人的には一番好きな空港であったりする。隈研吾の新国立競技場のコンセプトはこれのパクリなんじゃないかなあと思ったり。

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実はノルウェーEU非加盟国であり、したがって当然ユーロではなく自国通貨のノルウェークローネが流通している。1クローネおよそ12円なのだが、ここでも当然というか物価は卒倒するほど高い。

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トースト600円、パニーニ800円、カルゾーネ900円

 

オスロ空港からは市内へのアクセスはエクスプレスで30分足らず。乗り場へのアクセスは迷う余地もない

 

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材木店のショールームのような

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13年ぶりに降り立ったオスロ中央駅はかなり拡張されていたが、質素な本館の出入口は以前と少しも変わらず。

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駅前広場には巨大なライオンのオブジェが出来ていた

乗り継ぎ一泊なのでこの日の宿は駅近を最優先し、駅から徒歩5分のCityboxという完全セルフチェックインチェックアウトのホテルを選択。入口のチェックイン機で予約番号を入力すればカードキーが出てきて、チェックアウトはキーをドロップボックスに入れるだけ。建物は古いが内部はセンス良くリフォームされていて、快適でコスパの高いビジネスホテルといった趣。

 

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セルフチェックインカウンターが並ぶ

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やっぱりシングルルームはない

一休みしたら少しだけオスロを歩いてみるか

*1:町としての体を為している集落では世界最北。単に人が存在するだけであればもっと高緯度にもあることはある。観測施設とか

お金では買えないもの

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コロナ自粛の最中にいらっしゃったライターさんとカメラさん。

100life.jp

 

美しく書いていただいたのは些か面映ゆいが、こちらが口で軽く言ったことも後でしっかり調べて裏を取って書く丁寧な仕事ぶりはさすがプロ(何様)。

インタビューの中で「どこが一番気に入っていますか」と聞かれ、その時は一年前に仕上げたばかりの玄関と答えた(ような気がする)。しかし後になってよく考えてみると、この家で一番気に入っているのは玄関でもキッチンでもリビングでもなく、木の床がそうかもしれない。これこそ唯一無二のものだからだ。

大抵の「いいな」は金があれば手に入る。他人が着ている服も靴も腕時計も、金を出せばそっくり同じものが手に入る。家にしても同じ、玄関タイルが気に入れば同じタイルを買って同じように貼ることが出来るし、キッチンが気に入ればおなじシンクとタイルを買ってそっくりに作ることが出来る。ソファが気に入れば同じソファ、テーブルが気に入れば同じテーブルを揃えることは、金さえあれば誰にでも出来る。

ただ我が家で使いこんだ床は同じように使いこまなければ、10年間生活を共にする中で毎日乾拭きをして*1時々は濡れ雑巾を掛け、また時には油を摺り込んで使いこんできた床だけが(生活を共にした証である傷や凹みも込みで)醸し出す味は金を積んでも手に入らないもの。これからも時間の経過とともに10年後には10年後の、20年後には20年後ならではの深みを増していく筈だ。

ヴィンテージ品には現在のプロダクトでは考えられないコストがかけられているところにまず惹かれるが、時の洗礼を経た物だけが持つ味わいも大きな魅力の一つ。10年を経た我が家の床もそのように深化していって、いつか我が家がなくなった後もどこかの建物で古材として使われるようになれば最高だろう。

 

 

*1:掃除機を置く場所がないので毎日ワイパー掛け。ウサギにしても猫にしても、獣がいると家は激しく汚れるので毎日の床掃除は欠かせない