カサエゴ

Casa Egoista (定員一名の小さな家)

セミリタイアを目指す後半戦(2)

普通に考えてこの先の人生はこれまでの人生より確実に短いという人生の後半戦に入り、気が付けば歴史上のあんな偉い人もこんな偉い人も自分の歳に届くことなく死んでしまっていたりする。そしても自分も桜を見ることはあと五十回もあるまいと考えると、この後もこれまでと同じように生きていていいのかと焦燥感を感じる機会が増えた。「仕事ばかりしなくてもよかった」が今際の際の後悔でも最も多いものの一つ、という事実は重い。

1book.biz

 

そんな矢先に先述の事情で退職と相成り、人生で初めてまとまった休日を得た。

学生の時にもなかったような長ーい休日を自分はどのように感じるか。働きづめのサラリーマンが定年退職して抜け殻のようになってしまったという事例はこれまでに多く聞いたことがあり、また過去にやはり退職して再就職までの間に長期の空白が開いた友人の言葉「はじめの一か月はパチンコ三昧で楽しいが、その後はパチンコにも飽きてやることがなくなり日に日に鬱が入ってくる」も思い出し、自分自身はどうなるのだろうと興味津々だが少し不安ではあった。

で実際に過ごしてみてどう感じたかと言えば、これがもう毎日楽しくてたまらない、しかも日が経つ事に楽しさが増大してくる。読みたい本も行きたいところも見たい景色もそれこそ無数にあるのでさもありなん。再就職が決まってもほっとしたのが半分残念なのが半分、何かあちらの都合で入社を一カ月くらい遅らせてくれとか言われないかなとムシのいいことを願ったほど。「遊びをせんとやうまれけん」こそが本来の自分であり、生活の為にやむなくそんな自由な日々から一旦は離れるものの、少しでも早く戻ることを今後の目標として真剣に検討することとした。

とはいえ、一介のサラリーマンが小さいながらも徒手空拳から家を建て、借金を完済し、かつ一生をのんびり遊んで暮らせる資金を用意するなどどう考えても直列では無理。自分に投資の才でもあれば可能であったかもしれないが、今更ないものねだりをしても仕方がない。なのでまずは生活に最低限必要なコストを試算し、それを確保しつつ自由時間を最大化するのを考えるのが現実的。即ちセミリタイア。食費、光熱費、通信費、所得税、住民税、健康保険、年金、車とバイクの維持費、家の修繕費、居候の維持費、等々を見積もって月々どれくらいの収入があれば生きていけるか。幸いにして(人間の)扶養家族もいない身であれば、およそ新卒の初任給程度の収入があれば十分生きていける*1と試算された。いや家賃も住宅ローンもないってのはつくづく素晴らしいね。

 

*1:生活コストの中で圧倒的に多くを占めるのは車の維持費。最も関わる時間が少ないものが最も高くつくという頭の痛い話

セミリタイアを目指す後半戦(1)

客観的に見て後半戦に入った人生、残された時間をどう生きるかということに考えを巡らすことが知らず知らずのうちに多くなってきた。

時を同じくして勤務先の経営状態が悪化、一言でいえば左前となり、程なくしてリストラの前哨としての早期退職者募集を開始。これまでの自分や友人の経験を通して言えることとしては、こうなってしまったら会社はもう駄目。選択肢は二つ、削減すべき固定費としか社員を見なくなった会社の露骨な経費削減策(俗にリストラという)にひたすら耐えながらいつ来るとも分からない再浮上の日を待つか、それとも早々に見切りをつけ、貰うものを貰ってさっさと去るか。

今回の自分が選んだのは迷う余地もなく後者。年齢からしてコネもない中での再就職は大いに苦戦することが予想される状況でなぜ躊躇う余地もなくほぼ即決で手を挙げたのかと言えば、まず自ら選んで入った訳でもないという経緯からそもそも会社に対しロイヤルティのロの字も持っていなかったということ、そして借金を抱えた身でもなければどう転んでも自分ひとり(と居候ズ)が食べていく位はどうとでもなると腹を括れたことが何より大きい。
いよいよとなればタクシーの運ちゃんでもやって養ってやるから心配するな、と居候の腹を撫でながら就活を開始しおよそ二か月、首尾よくというか運よくというか、失業手当を貰う間もなく次の職場が決まる。

前々職は会社が買収されたことに伴うリストラの開始に先立って辞め、今回は経営悪化によるリストラの開始に先立って辞め。再就職を相談した前々職の上司からはお前は逃げ足が早いよなあと妙な感心をされたものだが、大借金を抱えていた前回の転職と違い、今回の再就職に当たっては年収は二の次で残りのサラリーマン人生をストレスを溜めずに過ごせる環境であることを最優先に考える。
そうして決まった職場(初めての日本社)は果たせるかな、自宅から徒歩でも通えるほど近く通勤ラッシュとは無縁、これまでの人生を過ごした中小外資系企業にありがちな一癖二癖あるおっさんが幅を利かせていることもなく、そして自分の心持ちとしても最早セミリタイアの心境なので心穏やかにほぼストレスフリーで働ける環境。予想通り露骨なリストラが始まって社内の空気は最悪という前社の噂を聞くにつけ、やはり我が家を経済的負担の軽いLWHにしておいて良かったと思う他はない。もし奮発してRC造の三階建でも建てて未だ借金を抱える身であったならばさすがに次の当てもなく退職するなどという博打を打つことは叶わず、どんな仕打ちにあっても会社にしがみつき続けるしかなかったのだから。

そう考えるとやはりこのご時世で大借金を抱えるのは相当なリスクという他はなく、持ち家反対派の言うことにも一理あると言わざるを得ない。悪いこと言わないから公務員でもなければ身に余る借金を抱えて不必要に立派な家を建てるのはやめておきましょう。建てるならばスーツケースのような家を。

いいものと好きなものは違う話

今年に入って乗り換えた一台。

f:id:emash:20210503173402j:plain

GW休業のスーパーレーサー前

なお先代はこちら

f:id:emash:20201121160147j:plain

七五三の氷川神社

いや全然違いますね。

先代バイク、購入当初は満足度が高かった。メーカー肝煎りの最新機種はパワフルで電子制御てんこ盛り、風を遮るウィンドシールドのおかげで高速巡航も楽にこなせ、オートクルーズまでついてどこまで走っても疲れ知らず。もう至れり尽くせりの一台は当初の目論見通り、老齢で故障がちな車に代わる遠出の道具としての機能は申し分なかった。つまり「いいもの」だった。

しかし時間の経過とともに内心に少しずつコレジャナイ感が出てくる。巨大でヘビーな車体は街中での取り回しに難儀するし、プラスチックを多用した外装の質感も、レトロポップではあるが渋味に欠ける色遣いも、照明性能は高いがコミカルに見えるダブルヘッドライトも、どうも自分が本当に求めていたものとは違うんじゃないか。なんか違う。
内心で膨らんだ違和感を突き詰めていった結果、自分がより価値を置いていたものは長距離ランナーとしての機能性よりバイクとしての「らしい」佇まい*1そのものであり、「いいもの」を「好きなもの」と取り違えてしまう罠に(この年になってなお)嵌っていたことに気が付いた。

その反省を踏まえて次の一台では「好き」の赴くままに車体を選び、更にエンジンとホイールとマフラー以外は全て手を入れた(交換か加工か塗り直すか)結果、今度こそ「好きなもの」全開の納得のいくものに。プラ外装皆無=ウィンドシールドもカウルも皆無なのでとても速度は出せない*2し、排気量は同じでもパワーは劣るしその割に乗り味は荒々しいし、クラッチはやたら重くてクルコンなんて気の利いた装備もないので右手も左手もやたら疲れるし、はっきり言って乗り物としての性能は明らかに先代より劣るのだが、やはり好きなバイクを好きなように仕上げた満足感はそれを上回って余りあり、オフ車でもないのに(先代ですら行かなかった)山道に分け入っていって泥まみれになったり、まあ乗っていること自体が楽しい。

ということで自粛期間中のGWでも毎日のように乗り回しているのであった。しかし時間もお金も余計にかかったね

f:id:emash:20210329145030j:plain

電波の届かない山中。リアフェンダーぶった切ってるから泥はねがすごい。もうしません


「後になって軌道修正するのが難しい家を建てる際は自分の趣味嗜好の方向性が固まってからにした方がいい」とか偉そうに書いていた本人にもそれが出来ていなかったという一例。自分自身の真の欲求を把握するのはかくも難しく。

 

*1:ロー&ロングなシルエット、鉄の塊の質感、マットブラックベースの渋い色遣いで灯火類は出来るだけ小さく

*2:高速では法定速度プラス一割程度で巡航速度の限界。性能の問題でなく、それ以上は風圧との戦いでとてもリラックスして乗ってられない。否応なく安全運転を強いられる

初夏なのに薄ら寒い話

やっと届いたワクチン接種スケジュール、しかも高齢者のみ
我々労働年齢層に接種が行き渡るのは来年というところか。

 

f:id:emash:20210428215322j:plain

 

どう考えてもオリンピックなんて無理じゃない?笑

開催まで3か月を切ってるのに未だに緊急事態宣言なんて出してて、しかも国民の殆どがワクチン未接種。他国からしてみればこんな国に大事な選手を送りたくないでしょ。我々としても安心して来て下さいなんて口が裂けても言えないし、何かあっても責任は取れない。重量挙げとかレスリングや柔道の重量級とかなら糖尿の基礎疾患抱えた選手もいたりするし、そんな選手に日本行きを命じるなんて戦地に行ってこいと言ってるのも同然。いやー遣りたくないわー(勝手に外国のオリンピック委員会の心情を推察)。

しかしここまで切羽詰まってグダグダな空気感が広がっても、誰も延期や中止を真剣に議論しようとしないこの不思議。ミッドウェー後の日本もこんな感じだったんだろうなあと思わずにいられない。

負け戦が確定したのに誰も戦争を終わらせようとせず、その後ずるずると3年もボロ負けを続けて亡国に至ったあれから75年も経つのになお全く変わっていない、ダメージコントロールより空気読みと忖度を優先するこの国民性。
ワクチン副作用発生率とコロナ罹患死亡率を比較すればどちらがリスキーなのかは火を見るより明らかなのに、ありもしない「100%安全」に拘ってここまで接種を遅らせる損得勘定の出来ないこの国民性。

いや本当にもうこの国は二度と戦争なんかしちゃだめだよね変わってないんだから。

 

11年目のリニューアル(11)タオルバーの第二の人生

洗面所のタイル貼りでフック形状のタイルを一枚貼ったため、それまで使用していたタイル掛けは失業することに。

f:id:emash:20200921193636j:plain

一枚1.2万円ほどもするフック形状のタイル。タオルはここに掛けられるので

f:id:emash:20150915233146j:plain

不要となった真鍮製のタオル掛け

 

 

およそ5年でお役御免となったこのタオルバー、いつもであればさっくりと断捨離対象となるところだが、これはこれで気に入っているので何となく手放し難く手元に置いておいた。しかし我が家に2か所以上のタオル掛けなど必要ないのでこれが再び必要となる可能性はゼロであり、ただ死蔵しておいても意味がない。ふと思い立ってDIYの友と呼ばれるお馴染みのモノタロウサイトを丹念に調べ、幾つかパーツを取り寄せるとタオルバー再生を試みる。

f:id:emash:20210305180057j:plain

これの片側のアームに

f:id:emash:20210305180252j:plain

スライドレールとホルダを組み込み

f:id:emash:20210322192729j:plain

こうして

f:id:emash:20210322193054j:plain

こうなった

f:id:emash:20210322192755j:plain

前面にせり出る吊戸棚の扉をぎりぎりかわす位置

かくしてさささバーとして第二の人生を歩むこととなったタオルバー。キッチンの梁に隠れる位置なので目立たず、真鍮の風合いはやっぱりいい感じなのでこれは成功。折角気に入って買った物を捨てずに済み、再生コストは数百円。しかも生活が少し便利になって言うことなし。

ただし自分より背が低い人には全く手が届かない高さなので、子供には危険すぎる2階の掃き出し窓やウッドデッキの柵、女子供には高すぎるステンレスシンクや洗面台に加え、また一つ万人向けではない(建売住宅には絶対にない)自分仕様が加わって我が家のカーサ・エゴイスタ濃度はさらに高まる。それは幸せなことには違いない。

f:id:emash:20210322192108j:plain

色々使ってキッチンの布巾はこれが一番という結論に落ち着いたこれがさささ



 

花ざかりの庭

満開の桜が散る頃になって満開となった我が家の猫の額ばかりの庭。今年は植樹から4年目となったアオダモが初めて花をつけた。

 

f:id:emash:20210327134931j:plain

f:id:emash:20210327135005j:plain

f:id:emash:20210402121750j:plain

足元のクリスマスローズは冬に花をつけたら面白かろうと思って植えたのだが、あにはからんや普通に毎年春に花を咲かせている。何を植えても長持ちせず枯れてしまう過酷な環境の小庭で特に手入れせずともわさわさ株を増やしてくれているタフさは有り難いが。

アオダモの枝の今年の伸びはないかと思ったが、上はともかく下の枝は今年もしっかりと20cmほど枝が成長している。小さな我が家には不釣り合いなほどの大きさに育ったのはともかく、道路を通る車の邪魔になりかねない枝ぶりなのでそろそろ剪定を考慮する必要があるかも…

LWH004はLWHの新しいスタンダードとなるか

緊急事態宣言再発令直前の昨年12月の終わり頃、S氏と共に見えられたのがSさん。
現在ご自宅の設計をS氏と進行している最中とのことで、その参考までにLWH002を一度見ておきたいとのことで、S氏に連れられてご夫婦でいらした次第。

S氏によれば4件目のLWHとなるとのこと。これまで一度もS氏のモデル通りに出来上がっていないLWH*1だが、今回も既成プランにない平屋プランで考えているという。四連続フォアボールで押し出しで一点だね。何が。

考えてみれば家の最もシンプルな形が平屋であるのに違いなく、LWHのコンセプトとしては確かにミニマルな平屋プランがあっても良かった。LWHは都市型住宅と想定されているので、広い土地を必要とする=都市では非常に高くつく平屋は敢えて提案から外していたのだろうが、今回のようにロケーションを都心からすこしずらせばライトウェイトで平屋建てが可能となる訳で、LWHとしての平屋建てはどのような家になるのか興味深い。風の心配もあまりないから庇を深くとった屋根になるのか、それとも現在のLWHプランの高さをそのまま低くしたような形になるのか。S氏のことだから安易にどこかのハウスメーカーが出しているなんちゃらキューブみたいな(白くて四角くてサイコロのような)家にはしないと思うが*2

平屋ということは当然全てワンフロア、二階建て三階建てより必然的に床の存在感がより大きくなるので床材選びが重要になる筈だが、床材としてはS氏推しの杉でなくメープルを考えられているとのこと。聞いた瞬間に硬質な艶を放つ白いメープルが一面に貼られた明るい家が頭に浮かび、一面メープルの家は見たことがないので俄然興味をそそられる。メープルの床は洋風なイメージがあるがLWHでどのように映えるか。
ただ床面積が広いだけに杉材とはかなりの価格差がある(とS氏にも言われた)筈だが、それでもメープルに拘るだけあって施主Sさんの家おたくぶりは相当なもの。というかS氏の施主は漏れなく家おたくであって、それはS氏が「施主に考えさせる」という一見優しく実はかなりスパルタな家づくりをモットーとしているので家おたくでなければS氏には依頼しない(できない)のかもしれないが、それを割引いても今回いらしたS氏の造詣はヘイルメリーの副編集長以来久しぶりに感心してしまった*3

casaegoista.hatenablog.jp


 拘る人が作った家は(どんな風味であれ)例外なく面白い。Sさんは思いついてすぐにパッと出すタイプではなく自分の中で煮込んで煮込んで形がなくなるくらい煮詰めてから外に出すタイプのように見えるが、そのような人が悩んで(多分)S氏を悩ませて作る家はどのようなものになるか、他人事ながら(だから?)楽しみであったりする。

 

 

訂正:床材はメープルでなくてヤマザクラとのこと。ヤマザクラであれば白というより赤っぽくなると思うが、このレア素材を敷き詰めた家はメープル以上に見たことがない。広葉樹なので国産材でも杉とはまた違った硬質な雰囲気になるに違いなく、新しいLWHのスタンダードとしてもまた興味深い。

 

*1:最もS氏のイメージに近いLWH003に限って賃貸中でモデルハウスとは出来ないというのが痛し痒し

*2:もしそうだったらすみませんと念には念を入れて一応先に謝っておこう

*3:上からの物言いではなくただ感心したというだけ